
インプラントは歯を失ってしまった場合の治療ですが、「インプラントにはどんなメリットがあるの?」「デメリットもあるの?」と気になっている患者さんもおられるかもしれません。インプラント治療のメリット・デメリット、どんな方に適しているのかをご説明します。
インプラントとは?
インプラントは、歯を失った部分に人工の歯根(チタン製のネジ)を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける治療法です。自然な見た目としっかり噛める機能を取り戻せるため、多くの方に選ばれています。
- 人工歯根(インプラント体) → チタン製のネジのようなものを顎の骨に埋め込みます。
- アバットメント → 人工歯根と被せ物をつなぐ部分。
- 被せ物(人工歯) → セラミックやジルコニアなどの素材で作られ、天然歯に近い見た目と機能を持ちます。
インプラントは「第三の歯」とも呼ばれ、失った歯の機能を補う優れた治療法ですが、メリット・デメリットがあるため慎重な選択が必要です。
インプラントのメリットとは?
インプラントには、以下のような多くのメリットがあります。
1. 天然歯のような見た目と機能性
インプラントは、天然歯に極めて近い見た目と機能を備えており、口元の自然な美しさを保つことができます。入れ歯のようにズレたり外れたりすることがないため、会話や食事の際にもストレスを感じることが少なく、特に硬い食べ物や粘着性の高い食品も問題なく楽しめる点は大きな魅力です。
また、しっかりとした噛み合わせを維持できることで、消化のサポートにもなり、全身の健康にも良い影響を与えます。さらに、審美性にも優れているため、笑顔に自信を持ちたい方にとって大きなメリットとなるでしょう。これらの点から、インプラントは単に歯を補う治療ではなく、生活の質を向上させる選択肢の一つと言えます。
- 天然歯とほぼ同じ見た目で、自然な口元を維持できる。
- しっかり噛めるため、食事の制限がほとんどない。
- 発音が自然で、違和感が少ない。
- 入れ歯と違い、ズレたり外れたりする心配がない。
- 硬いものや粘着性の高い食品も問題なく食べられる。
- 噛む力がしっかりと伝わるため、消化にも良い影響を与える。
- 審美性が高く、笑顔に自信を持つことができる。
→ インプラントは見た目・機能ともに優れており、生活の質が向上します。特に「好きなものを自由に食べられる」というのは大きなメリットです。
2. 他の歯に負担をかけない
インプラントは、部分入れ歯やブリッジとは異なり、周囲の健康な歯に負担をかけることなく治療ができる点が大きな特徴です。従来のブリッジ治療では、隣接する歯を削る必要がありましたが、インプラントならばその必要がなく、健康な歯をそのまま維持できます。
また、噛む力が均等に分散されるため、特定の歯に過度な負担がかかることがなく、残存歯の寿命を延ばすことにもつながります。これらのメリットにより、インプラントは口腔全体の健康を維持しながら、自然な噛み心地を取り戻すことができる治療法といえます。
- 部分入れ歯やブリッジとは異なり、隣の健康な歯を削る必要がない。
- 他の歯を支えにしないため、残っている歯の寿命を延ばせる。
- 噛む力が均等に分散されるため、他の歯への負担が少ない。
- ブリッジのように支えとなる歯に過度な負担がかからない。
→ 健康な歯を守りながら、失った歯を補える点が大きな魅力です。
3. 顎の骨が痩せるのを防ぐ
インプラントは、顎の骨の健康を維持する点においても大きなメリットがあります。歯を失うと、その部分の骨が次第に吸収され痩せてしまいますが、インプラントは顎の骨に直接埋め込まれるため、骨の吸収を防ぎやすくなります。
特に、骨の痩せが進行すると顔の輪郭が変わり、老けた印象を与えることもありますが、インプラントによって顎の骨をしっかりと保つことで、若々しい表情を維持することが可能です。入れ歯ではこの骨の痩せを十分に防ぐことが難しいため、長期的な観点からもインプラントは審美性と健康の両面で優れた選択肢となります。
- 歯を失うと顎の骨が徐々に痩せてしまうが、インプラントを埋め込むことで骨の吸収を抑えられる。
- 顎の骨がしっかりしていると、顔の輪郭が変わらず若々しい印象を保てる。
- 入れ歯では骨の痩せを防ぎにくいが、インプラントなら防ぐ効果が期待できる。
→ 顔の輪郭が変わるのを防ぎ、老けた印象になりにくい。
4. 長期間の使用が可能
インプラントは、適切なケアを行うことで長期間にわたって安定した使用が可能な治療法です。一般的に10年以上の耐久性があり、定期的なメンテナンスをしっかり行うことで、一生涯使い続けることもできます。
材質には生体親和性の高いチタンが使用されており、アレルギーのリスクが低く、身体に優しいのも特徴です。他の治療法に比べて耐久性が高く、入れ歯やブリッジと比べても、長期的な視点で安定性が優れています。そのため、一度の治療で長く安心して使用できる点が、大きなメリットといえるでしょう。
- 適切なケアをすれば、10年以上持つことが多い。
- メンテナンス次第では、一生使い続けることも可能。
- 材質がチタンであるため、体に優しくアレルギーの心配が少ない。
- 他の治療法よりも耐久性が高く、長期間の安定した使用が可能。
→ 入れ歯やブリッジと比べて、長期間安定して使用できます。
5. 口内環境が良好に保てる
インプラントは、取り外しの必要がないため、日常の歯磨きがスムーズに行え、清潔な口腔環境を維持しやすいというメリットがあります。入れ歯のように食べかすが詰まりにくく、適切なメンテナンスを行えばインプラント周囲炎のリスクを抑えることも可能です。
また、自然な噛み合わせを維持することで歯並びの乱れを防ぐ役割も果たします。これにより、健康な口内環境を長期間保つことができ、快適な生活を送ることにつながります。
- 取り外しの必要がないため、日常の歯磨きがしやすい。
- 入れ歯のように食べかすがたまりにくく、清潔な状態を維持しやすい。
- 正しくメンテナンスを行えば、インプラント周囲炎のリスクを抑えられる。
- 自然な噛み合わせを保つことで、歯並びの悪化を防ぐ。
→ 適切なケアを続けることで、清潔な口腔環境を保つことができます。
インプラントのデメリットとは?
一方で、インプラントには以下のようなデメリットもあります。
1. 全身疾患があると手術が受けられない場合がある
- 糖尿病や高血圧などの全身疾患を持つ方は、インプラント手術のリスクが高まる。
- 骨粗しょう症の薬を服用している方は、顎の骨がもろくなり手術が難しくなることがある。
- 心臓病や血液疾患がある場合、外科手術自体が禁忌となることがある。
- 事前に医師と相談し、必要に応じて内科医とも連携を取ることが重要。
→ 全身疾患をお持ちの方は、インプラントが適応可能かどうか事前に慎重な診断を受ける必要があります。
2. 治療期間が長い
- 手術が必要で、治療完了までに3~6ヶ月かかることが多い。
- インプラントと骨が結合するのを待つ期間が必要。
- 骨の状態によっては、骨の再生治療が必要になり、さらに期間が延びることもある。
- 「すぐに歯を入れたい」という方には向いていない。
→ 「すぐに歯を入れたい」という方には向いていないかもしれません。
3. 費用が高額になりやすい
- 保険適用外のため、1本あたり30万~50万円ほどかかることが一般的。
- 追加の骨造成手術が必要な場合、さらに費用がかかる。
- 長期的に見れば入れ歯やブリッジよりコストパフォーマンスが高い場合もあるが、初期費用の負担は大きい。
→ 費用面が気になる方は、他の治療法と比較しながら検討する必要があります。
4. 手術のリスクがある
- 顎の骨に埋め込む手術が必要なため、術後に腫れや痛みが出ることがある。
- 術後に感染するリスクがあり、適切なケアが求められる。
- 手術の成功率は高いが、まれにインプラントが骨と結合しないケースもある。
→ 手術に対して不安がある方は、事前に医師とよく相談しましょう。
5. 定期的なメンテナンスが必要
- インプラント周囲炎(歯周病のような炎症)が起こるリスクがある。
- 定期的な健診と、毎日の丁寧な歯磨きが不可欠。
- 適切なケアを怠ると、せっかくのインプラントが抜けてしまうことも。
→ インプラントを長持ちさせるには、しっかりとしたケアが必要です。
これらのデメリットを理解したうえで、しっかりと歯科医と相談し、自分に合った治療法を選びましょう。
インプラントが向いている人・向いていない人
インプラントが向いている人
- しっかり噛める歯を求める方
- 他の歯に負担をかけたくない方
- 長期間の使用を希望する方
- 顎の骨が十分にある方
インプラントが向いていない人
- すぐに治療を終えたい方
- 費用を抑えたい方
- 糖尿病や重度の歯周病がある方(事前の治療が必要)
- 顎の骨が極端に少ない方
→ 自分に合った治療法かどうか、歯科医と相談することが大切です。
まとめ
インプラントは、天然歯に近い機能と見た目を得られる優れた治療法ですが、デメリットもあるため慎重に検討する必要があります。
メリット
- 天然歯のような見た目と機能
- 他の歯に負担をかけない
- 顎の骨が痩せるのを防ぐ
- 長期間の使用が可能
デメリット
- 治療期間が長い
- 費用が高額
- 手術のリスクがある
- 定期的なメンテナンスが必要
インプラントを検討されている患者さんは、歯科医とよく相談し、自分に合った治療法を選んでくださいね。