インプラント

高齢者でもインプラント治療は出来る?

高齢者でもインプラント治療出来る?総入れ歯でも出来る?

茨木クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 脇田 悠仁

高齢者の方にとってのインプラント治療についてご説明します。高齢になっても健康な生活を続け、QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)を維持するためには、歯の健康が大切な要素になります。高齢者の歯の健康の為に、インプラントはどの程度役立つのでしょうか?

高齢者の方でもインプラントは出来る?

シニア

歯を失ってから数年経過した高齢者の方は、歯がない部分の顎骨が溶けて減っていきます。そのため、歯を失ってからの年数が長ければ長いほど骨はなくなり、インプラントを埋入するために必要な骨の高さや幅が足りない方が多いため、インプラントが出来ないということになってしまいます。

そんな場合には顎骨に人工骨や骨補填剤を埋め込んで増骨の処置をしてから、インプラント手術を行います。骨が充分に出来るまで数か月待つ必要がありますが、増骨の処置さえすればインプラントが出来ないということはありませんので、ご安心ください。

増骨にはGBR、ソケットリフト、サイナスリフトと呼ばれる術式があります。骨を増やす処置をした場合は費用が余計にかかりますが、インプラントは出来るようになります。

持病がある方は手術前にしっかりと確認

シニア

インプラント治療のためには外科手術が必要です。そのため高齢でなくても全身疾患のある方はリスクがあり、インプラント手術を受けることが出来ない場合がありますので、事前に確認が必要です。注意が必要なのは糖尿病、心疾患、高血圧、骨粗しょう症などの病気のある方で、現在の状態と服用されているお薬の内容をカウンセリング時に担当医にお伝えください。

病状や体の調子が安定していて、検査の数値が一定の範囲内の場合はインプラント手術が可能になる可能性もあります。

高齢者で総入れ歯の方に適したインプラントとは?

高齢の方に適したインプラントとは?

高齢になると虫歯や歯周病で歯を失って歯の本数は少なくなり、70歳以上で上下総入れ歯の方は4人に1人、80歳以上では2人に1人という調査結果があります。

総入れ歯は上顎または下顎の全ての歯を失った方のための入れ歯で、床(しょう)と呼ばれる歯茎の部分と、人工歯から構成されています。床がお口の粘膜に吸着することで入れ歯が安定し、噛む感触を顎の骨に伝えます。

総入れ歯はお口の中の異物感や痛み、噛みにくい、発音がしづらい、毎日外して洗ったり管理が面倒などという問題で困っている方も多く、「総入れ歯からインプラントに変えたい」とインプラントの相談に来られる高齢の患者さんもおられます。

 

総入れ歯の方向けインプラントはセルフケアのしやすさが重要

総入れ歯

インプラントは手術が無事に終わってしっかりと歯として機能するようになっても、インプラント周囲炎にならないように、毎日の歯磨きなどのセルフケアによるメンテナンスが欠かせません。

しかし高齢者の方は身体の衰えによって、徐々に口腔内のセルフケアが難しくなってきます。そのため高齢者の方には、少ない本数のインプラントで固定式の上部構造を支えるもの、または清掃がしやすい取り外し可能(可撤式)の上部構造がおすすめです。

インプラント治療とは

インプラントの構造

インプラント治療とは、歯を失った部分の顎骨にチタン製のインプラント体(人工歯根)を埋め込む外科手術を行い、インプラント体が骨と結合するのを待って、その上に上部構造(人工の歯)を取り付ける治療です。

入れ歯やブリッジと違ってインプラントは自立しており、他の歯による支えを必要としません。もちろん外れることを心配する必要もありません。

そして人工歯根をもっているので、噛む力をしっかりと骨に伝えることが出来、天然歯と同様かそれ以上の強い力で噛むことが出来るようになります。

また、異物感がなく自然な感じですので、しばらくたつとその歯がインプラントであることを意識しなくなる方が多いです。見た目も、セラミックやジルコニアで上部構造を作ることで、天然歯と見比べても違いが殆どわかりません。

一方、デメリットとしては、インプラントは保険適用外の自費治療のため治療費が高額になることと、外科手術が必要になること、そして骨とインプラント体がしっかり結合するまで数か月待つ必要があるため治療期間が長くなるということがあります。

インプラント治療後の注意点としては、インプラントは歯周病に弱いため、数か月ごとにメンテナンスのために通院することが必要になります。

▼インプラント治療についてはこちらで詳しくご説明しています。

総入れ歯の方へのインプラントの種類

総入れ歯の方へのインプラントの種類

総入れ歯の方がインプラントをされる場合の選択肢として、オールオンフォーとインプラントオーバーデンチャー(IOD)があります。

固定式のオールオンフォー(All-on-4)

オールオンフォーとは、総入れ歯の代わりに片顎4〜6本の少ない本数のインプラントで最大12本分の義歯(上部構造)を支えて、噛めるようにできる治療法です。

顎の骨のある部分を選んで、インプラントを斜めに埋入し、しっかりと固定させることがオールオンフォーの術式の特徴です。手術当日に仮歯が入りますので、その日から噛めるようになります。

取り外し式のインプラントオーバーデンチャー

総入れ歯の方のオーバーデンチャーは、上顎の場合は4~6本以上のインプラントを骨に埋入し、インプラントと総入れ歯を連結させるためのマグネット式のアタッチメントをインプラントと総入れ歯の双方に取り付け、マグネットの力で入れ歯を安定させます。

マグネット式ですのでインプラントオーバーデンチャーの総入れ歯は簡単に取り外しが出来て、通常の総入れ歯と同じようにきれいに洗うことが出来ます。

マグネットの力で入れ歯が固定されるため、通常の総入れ歯よりも安定してしっかりと噛めます。

高齢者が寝たきりになったときにインプラントはどうしたらいいの?

将来寝たきりになったらインプラントはどうしたらいいの?

高齢の方がインプラントオーバーデンチャーでの治療を受けられ、将来寝たきりになった場合には、口腔内の清掃がしやすいように、上部構造である総入れ歯を外して生活していただくことが出来ます。

オーバーデンチャーをつけて生活し、介護の方が毎日外して総入れ歯の清掃をしてまた口内に戻すよりも、普段から外して生活する方が、むしろ口腔内が衛生的に保てるのです。

お食事は、多くの寝たきりの高齢者の方と同じように、柔らかい食べ物を歯茎ですり潰して食べていただくことになります。

寝たきりになって、介護のしやすさためにわざわざ抜歯をされる方もおられますので、その点、インプラントオーバーデンチャーは理にかなった治療法といえると思います。

高齢者のインプラントに関するQ&A

高齢者に適したインプラント治療とは何ですか?

高齢者に適したインプラント治療は、少ない本数のインプラントで固定式の上部構造を支える方法や、取り外し可能な上部構造が推奨されます。

高齢者の骨が少なくてもインプラントはできますか?

骨が少ない高齢者の場合でも、骨増強の処置を行うことでインプラント治療が可能になります。

高齢者がインプラント治療を受ける際、持病は問題になりますか?

持病がある場合はリスクがあるため、事前に医師と相談する必要があります。

まとめ

シニア

インプラント患者さんの増加により、高齢の方のインプラントは増える傾向にあります。しっかりと歯磨きなどのメンテナンスをすることが必須になりますが、ご自分で噛める間は、総入れ歯をオールオンフォーやインプラントオーバーデンチャーに変えることは、しっかりと噛んで好きなものを美味しく食べるためにも、良い選択となるでしょう。

ですから、高齢者だからとインプラントを諦めることはありません。ただし、高血圧・心臓病・糖尿病などの持病のある方は、インプラント担当医と相談のうえ、メリットとデメリットをしっかりと比較したうえで治療をお受けください。

この記事の監修者
医療法人真摯会 茨木クローバー歯科
院長 脇田 悠仁

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本成人矯正歯科学会。日本臨床歯科学会(大阪SJCD) 学術委員・査読委員 兼任。日本臨床CADCAM学会。

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