インプラント

 「私でもインプラントできる?」治療可能かどうかの条件・基準を教えて!

インプラント治療の適応条件とは?

茨木クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 清水 博行

インプラントは「そもそもどんな治療なの?」「自分でも受けられるの?」と疑問を持つ方もおられるでしょう。実は、インプラントには適応条件があり、希望した方がどなたでも受けられるわけではありませんどのような方が治療に適しているのかご説明します。

インプラント治療とは?

インプラントの構造

「インプラントって聞いたことはあるけれど、実際どんな治療?」と疑問をお持ちの方も多いかもしれません。

インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に被せ物を装着する治療法です。

  • 天然の歯に近い噛み心地・・入れ歯やブリッジと比べても、より自然に噛むことができます。
  • 周囲の歯に負担をかけない・・ブリッジのように隣の歯を削る必要がありません。
  • 骨が痩せるのを防ぐ・・顎の骨に刺激を与え、骨の吸収を防ぐ効果があります。

このようなメリットがあるため、「もう一度しっかり噛めるようになりたい」と考えておられる患者さんに選ばれる治療法となっています。

インプラント治療の適応条件とは?

適応条件

「インプラントに興味があるけれど、自分も受けられるのかな?」と思われる方も多いのではないでしょうか。インプラント治療には適応条件があり、これを満たしていなければ治療が難しい場合もあります。では、どのような条件を満たせばインプラントが可能なのでしょうか?

1. 顎の骨がしっかりしている

インプラントは、顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込む治療です。そのため、十分な骨量と骨質があることが重要になります。もし骨が少ないと、インプラントをしっかりと固定できず、ぐらつきが起こる可能性があります。

骨が足りない場合でも、インプラントができる可能性はあります。 例えば、以下のような方法があります。

  • 骨造成術(GBR)・・特殊な材料を用いて、顎の骨を増やす方法です。
  • サイナスリフト・・上顎の奥歯の骨が足りない場合に、上顎洞(サイナス)の底を持ち上げて骨を増やす手術です。
  • ソケットリフト・・サイナスリフトよりも小規模な手術で、骨を増やす方法です。

このように、骨が少ないからと諦める必要はありません。まずは、レントゲンやCTを撮影し、骨の状態を確認することが大切です。

2. 健康な口腔環境が整っている

口腔内の健康状態はインプラントの成功率に大きく影響します。特に気を付けたいのが歯周病です。

  • 歯周病があると、インプラントが支えられない可能性がある
  • 口の中に汚れが多いと、インプラント周囲炎になりやすい
  • 虫歯が多いと、メンテナンスが十分にできず、トラブルの原因になる

では、どうすればよいのでしょうか?
治療を成功させるためには、まずクリニックで徹底的に歯周病や虫歯の治療を行い、口腔内の環境を整えることが重要です。

また、長持ちさせるためには日々のセルフケアや定期健診が欠かせません。治療を考えている方は、まず定期健診を受けて「お口の健康チェック」から始めるのがオススメです。

3. 全身が健康である

インプラントは外科手術を行うので、全身の健康状態も大切なポイントになります。「口の中の治療だから、全身の状態は関係ないのでは?」と思われるかもしれませんが、実は以下のような病気がある場合、注意しなければなりません。

  • 糖尿病・・血糖値が高いと傷の治りが遅くなり、感染のリスクが高まることがあります。
  • 高血圧・・血圧が高いと、手術時の出血が多くなり、リスクが増える可能性があります。
  • 骨粗しょう症・・骨がもろくなっている場合は、人工歯根が骨の中にしっかり固定されないことがあります。

「これらの病気があるとインプラントは絶対に無理なの?」と不安になるかもしれませんね。

病気があってもコントロールされていれば、治療が可能な場合があります。

例えば、糖尿病の方でも、血糖値が安定していれば問題なく治療を受けられることが多いです。また、高血圧の方でも、適切にお薬を飲んで血圧をコントロールしていれば、手術のリスクを抑えることができます。

「インプラントを受けたいけれど、持病がある…」という方は、医院で事前に相談してみましょう。主治医と連携しながら、安全に治療を進めることが可能です。

4. インプラントのケアを継続できる

インプラントは「入れたら終わり」ではなく、定期的なメンテナンスと適切なケアが欠かせません。歯磨きをしっかり行い、定期健診を受けることが大切です。

では、どんなケアが必要なのでしょうか?

  • 毎日の歯磨きを丁寧に行う → 歯垢が溜まるとインプラント周囲炎になりやすくなるため、専用の歯ブラシやフロスを使い、しっかり清掃することが大切です。
  • 定期健診を欠かさない → インプラントがしっかり機能しているか、医院でチェックを受けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
  • 喫煙を避ける → タバコは人工歯根の骨への定着を妨げる要因となるため、禁煙が推奨されます。

「毎日のケアや定期健診が面倒…」と思われる方もいるかもしれませんね。しかし、適切に管理すれば10年以上、場合によっては20年以上使うことができます。しっかりケアをすることで、長く快適に使えるのです。

インプラントには適応条件があり、以下の点が特に重要です。

  • 顎の骨がしっかりしていること
  • 健康な口腔環境が整っていること
  • 全身的に健康であること
  • ケアを継続できること

これらの条件を満たしていれば、インプラントは非常に有効な治療法となります。とはいえ、条件を満たしていなくても「絶対に無理」というわけではありません。骨造成や全身疾患のコントロールなどを行うことで、治療が可能になることもあります。

「自分はインプラントを受けられるのかな?」と疑問に思われる方は、まずはクリニックで相談してみることが第一歩です。ご自身のお口や体の状態をしっかり把握し、最適な治療法を見つけていきましょう。

出典:「歯科インプラント治療指針」厚生労働省

インプラントに適さないケース

適さないケース

治療が難しいケースについても知っておきましょう。実際にインプラントが出来ないのは、以下のようなケースです。担当医と相談しながら対応していくことで解決できるものもあります。

1. 骨量が極端に少ない

  • 顎の骨が極端に不足していると、人工歯根の固定が難しくなります。
  • 骨造成術を併用することで解決できる場合もあります。

2. 重度の歯周病がある

  • 歯周病が進行していると、インプラントを支える骨が溶けやすくなるため要注意。
  • 事前に歯周病治療を徹底することが重要です。

3. コントロールされていない全身疾患がある

  • 糖尿病、心疾患、骨粗しょう症などが重度の場合、成功率が下がる可能性があります。
  • 主治医と相談しながら慎重に判断しましょう。

4. 喫煙習慣がある

  • 喫煙は人工歯根の定着率を下げ、感染リスクを高める要因となります。
  • 長持ちさせるためには禁煙が推奨されます。

これらのケースに該当する場合でも、事前の準備や適切な対策を取ることで治療が可能になることもありますので、あきらめずにまずご相談ください。

難しいケースの一例

例えば、歯を失って長期間が経過し、顎の骨が痩せてしまったため、他院では「インプラント治療は難しい」と診断された患者さんがいらっしゃいました。この方は70代の女性で、入れ歯の噛みにくさや見た目のお悩みを抱えて当院にご相談いただきました。

まず、精密なCT撮影により骨の状態を詳しく調べた結果、インプラントを埋め込むには骨の厚みと高さが明らかに足りないことが分かりました。

そのままでは治療を断念するしかありませんが、当院では骨造成(GBR法)という治療法によって、人工骨を用いて足りない部分の骨を再生させました。約4ヶ月かけて骨が出来るのを待ち、再評価したうえで安全にインプラントを埋入することが出来ました。さらに、噛み合わせや審美性を細かく調整し、最終的にはご自身の歯に近い自然な見た目と噛み心地を回復することができました。

また、持病のある方や入れ歯を長年利用されてきた方のように、全身の状態や口腔環境に不安がある場合でも、担当医と連携しながら慎重に治療計画を立てて対応しています。このように他院で断られた方でも、丁寧な診査と最新の技術で、手術が可能になります。

インプラントを受けるための準備と改善策

インプラント治療を受けたいけれど、条件に不安がある方もいるかもしれません。そんな方のために、治療を受ける前にできる準備をご紹介します。

  • 歯周病の治療をしっかり行う
    → 健康な歯茎を保つことがインプラントの成功に直結します。
  • 顎の骨を増やす治療を検討する
    → 骨造成術を取り入れることで、骨量が足りない方でも治療が可能になることがあります。
  • 全身の健康管理をする
    → 糖尿病や高血圧がある場合は、医師と相談しながら病状を安定させることが大切です。
  • 禁煙を心がける
    → 喫煙は人工歯根の定着を妨げるため、治療前に禁煙することをおすすめします。

インプラントを成功させるためには、治療前の準備が重要です。しっかりと対策を行い、治療に適した状態を整えましょう。

インプラントを受ける際の注意点

インプラント

治療を検討する際に、押さえておきたい注意点もあります。これはどなたにも当てはまることですので、知っておく必要があります。

  • 治療期間が長い
    → 一般的に3ヶ月~6ヶ月の治療期間が必要です。
  • 費用がかかる
    → 保険適用外のため、費用が高額になることもあります。
  • メンテナンスが不可欠
    → 歯磨きや定期健診を怠ると、インプラントの寿命が短くなります。

いずれにしても、治療後に長期的に快適に使っていくためには、適切なケアと定期的なチェックが必要不可欠です。

まとめ

インプラントを受けるには、骨の状態や口腔環境、全身の健康状態が重要なポイントとなります。

  • 顎の骨が十分にあるか
  • 歯周病がないか
  • 全身疾患が安定しているか
  • 適切なメンテナンスを続けられるか

これらの条件を満たしていれば、インプラントは大変有効な選択肢となります。まずは医院でしっかり相談し、ご自身に合った治療を進めていきましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 茨木クローバー歯科
院長 清水 博行

大阪歯科大学卒業  日本補綴歯科学会  日本口腔インプラント学会

▶プロフィールを見る

茨木クローバー歯科・矯正歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック