成人の8割以上が歯周病ってホント?

茨木クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 清水 博行

成人の約8割が歯周病って本当?

答えは「ほぼ本当」です。
「日本人の成人の約8割が歯周病または歯周病予備軍」といわれていますが、これは多くの人に歯ぐきの炎症や歯周病の初期症状が見られることを示しています。重度の歯周病の人が8割いるという意味ではありません。

歯周病は初期にはほとんど自覚症状がないため、自分では健康だと思っていても、歯科医院で検査をすると歯周病が見つかるケースは少なくありません。

この記事では、成人の約8割が歯周病といわれる理由や、ご自身でできるセルフチェック、歯周病になりやすい人の特徴、予防方法についてわかりやすく解説します。

この記事を読むとわかること

  1. 成人の約8割が歯周病といわれる理由
  2. 歯周病とはどのような病気なのか
  3. 歯周病セルフチェックの方法
  4. 歯周病になりやすい人の特徴
  5. 今日から始められる歯周病予防

 

成人の約8割が歯周病って本当?

「成人の約8割が歯周病」という話を聞いて、「そんなに多いの?」と驚かれる方も多いでしょう。この数字は、厚生労働省の歯科疾患実態調査(2005・2011年)で、歯ぐきに何らかの異常が認められた人が約8割だったことから広く知られるようになりました。

ただし、この「約8割」には、

  • 歯ぐきが少し赤く腫れている「歯肉炎」
  • 初期の歯周病
  • 中等度・重度の歯周病

まで含まれています。

つまり、「重度の歯周病患者が8割いる」という意味ではありません。しかし、逆にいえば、多くの方が自覚のないまま歯周病の入り口に立っているともいえます。

歯周病は痛みが少ない病気です。
「歯磨きのときに少し血が出るだけ」
「朝起きると口の中がネバつく」
こうした症状も、実は歯周病のサインかもしれません。

さらに歯周病は、日本人が歯を失う原因の上位を占める病気でもあります。虫歯よりも歯周病で歯を失うケースが多い年代もあるため、「痛くなってから治療する」のではなく、「症状がなくても予防する」という考え方がとても重要です。

歯周病とはどんな病気?

歯周病とは、歯と歯ぐきの境目にたまったプラーク(歯垢)の細菌によって起こる感染症です。細菌が増えると歯ぐきに炎症が起こり、さらに進行すると歯を支えている骨(歯槽骨)が少しずつ溶かされてしまいます。

初期の段階では痛みがほとんどないため、気付かないまま進行することが少なくありません。

歯周病の進行

段階 主な症状
健康な歯ぐき ピンク色で引き締まっている
歯肉炎 歯磨きで出血する・歯ぐきが赤い
軽度歯周炎 歯周ポケットが深くなり始める
中等度歯周炎 骨が溶け始め、口臭や歯のぐらつきが出る
重度歯周炎 歯を支える骨が大きく失われ、歯が抜けることもある

歯肉炎の段階であれば、適切な歯磨きや歯科医院でのクリーニングによって改善できることが多いですが、歯周炎へ進行すると治療が必要になります。

そのため、「まだ痛くないから大丈夫」と放置しないことが大切です。

あなたは大丈夫?歯周病セルフチェック

歯周病は、自分では気付きにくい病気です。

次の項目に当てはまるものがないかチェックしてみましょう。

チェック項目 YES・NO
歯磨きをすると血が出ることがある
朝起きたときに口の中がネバネバする
口臭が気になると言われたことがある
歯ぐきが赤く腫れている
歯ぐきが下がって歯が長く見える
歯と歯の間に食べ物が詰まりやすい
歯が少しぐらつく感じがする
以前より歯石が付きやすい

判定の目安
0~1個…現在は比較的リスクは低い状態です。毎日のセルフケアを続けましょう。
2~3個…歯周病の初期症状が始まっている可能性があります。一度歯科医院で検査を受けることをおすすめします。
4個以上…歯周病が進行している可能性があります。早めの受診をおすすめします。

セルフチェックはあくまでも目安です。

歯周病は見た目だけでは判断できないことも多く、歯周ポケットの深さや歯を支える骨の状態は歯科医院でしか正確に調べることができません。

「少し気になる症状がある」という段階で受診することが、歯を長く残すための一番の近道です。

成人の約8割が歯周病といわれる4つの理由

「毎日歯磨きをしているのに、なぜこんなに歯周病の人が多いの?」と疑問に思われる方もいるでしょう。

実は、歯周病は歯磨きだけでは防ぎきれないこともあり、生活習慣や体質などさまざまな要因が関係しています。ここでは、成人の約8割が歯周病または予備軍といわれる主な理由をご紹介します。

1. 歯磨きだけでは歯垢を完全に落とせない

歯周病の最大の原因は、歯の表面に付着するプラーク(歯垢)です。プラークの中には数百種類もの細菌が存在し、歯と歯ぐきの境目に炎症を起こします。しかし、歯ブラシだけでは歯垢を100%取り除くことはできません。

特に、

  • 歯と歯の間
  • 奥歯の裏側
  • 歯並びが重なっている部分
  • 歯ぐきとの境目

などは磨き残しが多くなります。

そのため、デンタルフロスや歯間ブラシを使わないと、歯周病の原因菌が増えやすくなります。近年では予防歯科の重要性が広く知られるようになりましたが、フロスや歯間ブラシを毎日使用している方はまだ多くありません。

2. 歯周病は初期症状がほとんどない

歯周病が「サイレントディジーズ(静かに進行する病気)」と呼ばれることをご存じでしょうか。

初期の歯周病では、

  • 少し歯ぐきが赤い
  • 歯磨きで血が出る
  • 朝だけ口がネバつく

程度の症状しかありません。

痛みがほとんどないため、
「疲れているだけかな」
「たまたま出血しただけ」
と思ってしまい、受診が遅れるケースが非常に多い病気です。

その間にも歯を支える骨は少しずつ失われ、気付いた頃には治療が必要な状態まで進行していることがあります。

3. 定期健診を受ける人がまだ少ない

歯周病は、症状がなくても進行する病気です。そのため、自覚症状がなくても定期的に歯科医院でチェックを受けることが大切です。

歯科医院では、

  1. 歯周ポケットの深さ
  2. 出血の有無
  3. 歯石の付着
  4. 歯ぐきの状態
  5. レントゲンによる骨の状態

などを確認し、歯周病の早期発見につなげています。

しかし、日本では「歯が痛くなったら歯医者へ行く」という考え方がまだ根強く、予防を目的として定期健診を受ける人は十分とはいえません。症状が出てからでは治療期間が長くなることもあるため、定期的なメンテナンスが重要です。

4. 生活習慣や全身の健康状態も影響する

歯周病は細菌だけが原因ではありません。体の抵抗力が低下したり、生活習慣が乱れたりすると、歯周病は進行しやすくなります。

例えば、

  1. 喫煙
  2. 糖尿病
  3. 睡眠不足
  4. 強いストレス
  5. 偏った食生活
  6. 口呼吸

などは、歯周病のリスクを高めることが知られています。

また、女性は妊娠や更年期などホルモンバランスの変化によって歯ぐきが腫れやすくなることがあります。このように、歯周病はお口だけの病気ではなく、生活習慣や全身の健康とも深く関係する病気なのです。

歯周病になりやすい人の特徴

歯周病は誰でもかかる可能性がありますが、特に次のような方は注意が必要です。

こんな人は要注意 理由
喫煙している 歯ぐきの血流が悪くなり、歯周病が進行しやすい
糖尿病がある 免疫力が低下し、炎症が治りにくくなる
歯磨き時間が短い 歯垢が残りやすい
フロス・歯間ブラシを使わない 歯ブラシでは届かない汚れが残る
口呼吸の癖がある 口の中が乾燥し、細菌が増えやすい
歯並びが悪い 磨き残しができやすい
妊娠中・更年期 ホルモンの影響で歯ぐきが炎症を起こしやすい
家族に歯周病の人が多い 生活習慣や体質が似ている場合がある

これらに当てはまる方でも、正しいセルフケアと定期的なメンテナンスを続けることで、歯周病のリスクを大きく減らすことができます。

「自分は歯周病になりやすいかもしれない」と気付くことが、予防への第一歩です。

放置するとどうなる?歯周病が引き起こすリスク

「歯ぐきから少し血が出るだけだから大丈夫」
「痛みがないから様子を見よう」

このように歯周病を放置してしまう方は少なくありません。しかし、歯周病は自然に治ることはほとんどなく、時間の経過とともに少しずつ進行していきます。

初期の歯肉炎であれば適切なセルフケアや歯科医院でのクリーニングで改善することもありますが、歯周炎まで進行すると歯を支える骨が破壊されてしまいます。

歯周病が進行すると、次のような症状が現れます。

  1. 歯ぐきが腫れる・出血する
  2. 口臭が強くなる
  3. 歯ぐきが下がり歯が長く見える
  4. 食べ物が詰まりやすくなる
  5. 歯がぐらつく
  6. 硬いものが噛みにくくなる
  7. 最終的には歯が抜けることがある

歯周病で一度失われた顎の骨は、元の状態まで自然に戻ることはありません。そのため、早期発見・早期治療が非常に重要です。

歯周病の進行による変化

進行段階 口の中で起こること
歯肉炎 歯ぐきが赤く腫れ、出血しやすくなる
軽度歯周炎 歯周ポケットが深くなり始める
中等度歯周炎 歯を支える骨が溶け始め、口臭やぐらつきが現れる
重度歯周炎 骨が大きく失われ、歯が抜けることがある

歯を失ってしまうと、インプラントやブリッジ、入れ歯などの治療が必要になる場合があります。ご自身の歯で長く食事を楽しむためにも、歯周病は早めに対処することが大切です。

歯周病は全身の健康にも影響する?

歯周病は、お口の中だけの病気ではありません。近年の研究では、歯周病による炎症や細菌が血液を介して全身に影響を与える可能性があることがわかってきました。

もちろん、「歯周病になると必ず病気になる」というわけではありませんが、歯周病を改善することは全身の健康維持にもつながると考えられています。

歯周病との関連が指摘されている主な病気

病気・状態 歯周病との関係
糖尿病 お互いに悪影響を与え合うことが知られている
心疾患 慢性的な炎症との関連が報告されている
脳血管疾患 歯周病との関連が研究されている
誤嚥性肺炎 高齢者では口腔内細菌が原因となることがある
早産・低体重児出産 妊婦の歯周病との関連が指摘されている

特に糖尿病との関係はよく知られており、歯周病を治療することで血糖コントロールの改善につながることも報告されています。このような理由から、歯科では「お口の健康は全身の健康につながる」という考え方が重視されています。

歯周病を予防するには?

歯ブラシ

歯周病は生活習慣病の一つともいわれ、毎日のケアと定期的な歯科受診によって予防できる可能性が高い病気です。

最も大切なのは、歯周病の原因となるプラーク(歯垢)をためないことです。

毎日の歯磨きでは、歯の表面だけでなく歯と歯ぐきの境目を意識して磨きましょう。また、歯ブラシだけでは取り切れない汚れを落とすために、デンタルフロスや歯間ブラシを併用することも重要です。

さらに、歯石になってしまった汚れはご自身では取り除けません。歯科医院で定期的にクリーニングを受けることで、歯周病のリスクを大きく減らすことができます。

セルフケアと歯科医院でのケアの違い

セルフケア 歯科医院でのケア
歯ブラシで歯垢を落とす 歯石除去(スケーリング)
フロス・歯間ブラシを使う 専門的なクリーニング(PMTC)
フッ素入り歯磨き剤を使う 歯周ポケットの検査
食生活や禁煙を心がける 歯磨き方法のアドバイス
毎日継続することが大切 定期的なメンテナンスで再発予防

歯周病予防は「毎日のセルフケア」と「歯科医院でのプロフェッショナルケア」の両方がそろって初めて効果を発揮します。症状がなくても3〜6か月に一度は定期検診を受け、お口の状態を確認することをおすすめします。

成人の約8割が歯周病に関するQ&A

Q1. 成人の約8割が歯周病というのは本当ですか?

はい、「成人の約8割が歯周病または歯周病予備軍」といわれています。ただし、これは重度の歯周病患者が8割という意味ではなく、歯ぐきの炎症や初期の歯周病まで含めた割合です。自覚症状がない方も多いため、定期的な歯科検診が大切です。

Q2. 毎日歯磨きをしているのに歯周病になることはありますか?

あります。歯ブラシだけでは歯と歯の間や歯ぐきの境目の汚れを完全に取り除くことは難しいためです。デンタルフロスや歯間ブラシを併用し、歯科医院で定期的なクリーニングを受けることで予防効果が高まります。

Q3. 若い人でも歯周病になりますか?

はい。歯周病は年齢に関係なく発症する可能性があります。近年では20代や30代でも歯肉炎や初期の歯周病が見つかるケースは珍しくありません。歯磨きの際の出血や歯ぐきの腫れなど、初期症状を見逃さないことが重要です。

Q4. 歯周病は治りますか?

歯肉炎の段階であれば、適切なセルフケアと歯科医院でのクリーニングによって健康な状態に改善できることが多いです。一方、歯周炎まで進行すると失われた歯を支える骨は自然には元に戻らないため、進行を抑える治療と継続的なメンテナンスが必要になります。

Q5. 歯周病を予防するためには、どのくらいの頻度で歯科医院へ行けばよいですか?

お口の状態にもよりますが、一般的には3〜6か月に1回の定期検診がおすすめです。歯石の除去や歯周ポケットのチェックを受けることで、歯周病の早期発見・早期治療につながります。

まとめ

「日本人の成人の約8割が歯周病または予備軍」という数字は、多くの方に歯ぐきの炎症や初期の歯周病が見られることを示しています。決して他人事ではなく、年齢に関係なく誰でも歯周病になる可能性があります。

歯周病は初期には痛みなどの自覚症状が少ないため、「気付いたときには進行していた」というケースも少なくありません。しかし、早い段階で発見できれば、セルフケアや歯科医院でのクリーニングによって進行を防げる可能性が高くなります。

毎日の歯磨きに加えてデンタルフロスや歯間ブラシを取り入れ、定期的な歯科検診を受けることが、大切な歯を長く守るためのポイントです。少しでも気になる症状がある方や、しばらく歯科検診を受けていない方は、この機会に一度お口の状態をチェックしてみましょう。

関連ページ:茨木クローバー歯科・矯正歯科の歯周病治療