矯正治療のためにはお口に装置をつける必要があります。装置にはワイヤーを歯につけるもの、取り外し式のもの、マウスピース型などがあります。それぞれについてご説明します。
大人用の代表的な矯正装置
1. ワイヤー矯正
ワイヤー矯正はブラケットと呼ばれるボタンのような装置を歯の1つひとつに貼り付け、そこにワイヤーを通して歯を動かします。これらの装置をマルチブラケット装置ともいいます。
ワイヤーとブラケットを使う場合、歯の表側に取り付けるものと裏側に取り付けるものがあり、表側につける治療法が一般的にワイヤー矯正と呼ばれます。
ブラケットには銀色の金属製と白いセラミック製、透明なプラスチック製があり、ワイヤーにも金属(銀色)のものと白っぽく見えるように加工されているものがあります。当院では主に白いセラミック製のブラケットをしており、白いワイヤーはオプションでの選択が可能です。
2. 裏側矯正
歯の裏側にブラケットとワイヤーをつける装置は裏側矯正(舌側矯正)と呼ばれます。装置は歯の裏側にあるため、他人からは見えにくいものの、お口の中の空間が狭くなることから、圧迫感や息苦しさを感じる患者さんもおられます。治療費はワイヤー矯正よりもやや高額になります。
3. マウスピース矯正
近年人気が出てきた透明なマウスピース装置を使う歯列矯正です。マウスピース矯正は食事と歯磨きの時には外すことが出来ます。当院ではインビザラインと呼ばれるマウスピースを使用しています。
インビザラインではまずiTeroと呼ばれる3Dスキャン装置でお口の型取りを行います。読み込まれたデータは、完全な歯並びになるまでの歯の動きをAIが作成し、3Dアニメーションとしてディスプレイ上で見ることができます。
その後、歯を効果的に動かすために担当医がクリンチェックと呼ばれる治療計画のデータを作成し、現在の不正咬合の状態から完全な歯並びになるまで、0.25ミリずつ歯を動かした形で、40~60枚程度の透明なアライナー(マウスピース)が作製されます。
患者さんは約10~14日毎にアライナーを新しいものに付け替えていき、そのアライナーの形に従って歯が動いていきます。当院では1日22時間以上のアライナーの装着をお願いしており、マウスピースの装着時間を患者さんご自身がしっかりと管理する必要があります。
小児矯正に使われる代表的な装置
1. 床型矯正装置
床矯正装置は取り外し式ので、小児矯正で良く使用されます。中央部分にはネジがついており、ネジを回すと横幅が広がるように出来ています。
床矯正装置を上顎の歯に引っかけるようにして取り付けて、1日に1回ネジを回すことで、子どもの上顎を少しずつ横に広げていきます。
お子さんの歯のガタガタの多くは、永久歯が生えるスペースがないことで起こりますので、歯に装置を付けて顎の横幅を広げることで、歯が綺麗に並ぶためのスペースを作ります。
2. 子供用のマウスピース矯正
子供もインビザライン(マウスピース矯正)での治療が可能です。10代のお子さん用インビザラインは「インビザラインティーン」と呼ばれる装置で、乳歯から永久歯に生え変わり中のお子さんも使えるよう、オプションが選べるようになっています。
お子さんの場合は特に、アライナー(マウスピース)の装着時間を守ることが大切なので、アライナーにはコンプライアンス・インジケーターと呼ばれるものがついています。
これは、毎日20~22時間以上マウスピースをつけていただくことで色が段々青色から水色に変わっていくもので、その色を見ればアライナーの大まかな装着時間を知ることが出来ます。
矯正装置を選ぶ際の注意点
矯正装置を選ぶ際には、以下のような要素を考慮することがあります。
1.不正咬合の種類によっての選択
不正咬合の種類や程度によって使用する装置の選択肢が変わる場合があります。軽度の歯並びの問題の場合は、マウスピースで対応出来ますが、重度の不正咬合で歯の重なりが大きかったり、前突が大きい場合は、ワイヤー矯正での治療が必要な場合も多いです。
2.矯正装置による治療期間の違い
装置の種類や、抜歯をするかしないかによっても治療期間が違ってきます。一般的にワイヤー矯正は1~3年(抜歯矯正を含む)、マウスピース矯正は数ヶ月~2年程度(部分矯正を含む)かかる場合が多いです。
3.装置の見た目
装置の見た目を気にされる方は、ワイヤー矯正は目立つため、目立たないマウスピース矯正か裏側矯正を選択される場合が多いです。しかし目立たない装置はワイヤー矯正よりも高価になります。
4.装置の種類による費用の違い
大人の矯正では、装置の種類によって治療費用が異なります。ワイヤー矯正は比較的費用が低いですが、裏側矯正やマウスピース矯正は通常、ワイヤー矯正よりも高価になります。
子供の矯正の場合は種類による価格の違いがあまりありません。
5.生活スタイルや性格によって装置を選ぶ
マウスピースは取り外しが可能で食事や口腔ケアがしやすいというメリットがあります。しかし、1日22時間という装着時間を守らないと治療計画通りに歯が動きませんので、ご自身で装着時間を管理する必要があります。
そうした自己管理が苦手な方はワイヤー矯正が向いています。
6.セルフケアの容易さ
ワイヤー矯正、裏側矯正は固定式なので、歯磨きが難しくなります。一方、マウスピースは取り外して普段通りの歯みがきを行うことが出来るためセルフケアは比較的簡単ですが、マウスピースそのものを洗って清潔にしなければなりません。
以上のような点も考慮して装置を選ぶと良いでしょう。
矯正装置の種類に関するQ&A
ワイヤー矯正は歯の表側にブラケットとワイヤーを装着し、歯を動かす治療法です。一方、裏側矯正は歯の裏側に装置をつける方法で、見た目が目立ちにくい代わりに装着空間が狭く、治療費がやや高額になります。
インビザラインは透明なマウスピースで、歯の動きをAIが計画し、0.25ミリずつ歯を動かすアライナーを作製します。患者は7~10日毎に新しいアライナーに交換し、1日22時間以上装着する必要があります。
床型矯正装置は取り外し式の小児矯正で、上顎の歯に引っかけて使います。ネジを回すことで横幅が広がり、子供の上顎を少しずつ横に広げて歯が綺麗に並ぶためのスペースを作ります。
まとめ
矯正装置には歯の表側にワイヤーをつける「ワイヤー矯正」、歯の裏側につける「裏側矯正」、マウスピース型の「インビザライン」、床型矯正装置などの種類があります。それぞれの装置には特徴があり、値段の違いもありますので、患者さんとご相談しながらどの種類を使うのかを決めていきます。