虫歯

虫歯を放っておくとどうなっちゃうの?

虫歯を放っておくとどうなっちゃうの?

「なんとなく歯がしみるけど、まあ大丈夫かな」
「忙しいから、歯医者さんに行くのはまた今度でいいや」
そんなふうに思って、虫歯を放っておいたことはありませんか?

実は、痛みがないからといって安心できるわけではありません。
虫歯は静かに、そして確実に進行し、気づいたときには取り返しのつかない状態になっていることも…。

ある日突然、ズキズキとした激しい痛みに襲われたり、
「歯を抜かないといけません」と言われたりしたら、きっと後悔してしまいますよね。

でも、大丈夫。今ならまだ間に合います。
「もし虫歯を放っておいたらどうなるの?」そんな不安にお答えしながら、
あなたの大切な歯を守るためのヒントをお伝えしていきます。

虫歯が進行してからでは遅い理由

虫歯は、初期段階ではほとんど痛みを感じません。しかし、その間にも歯の内部では確実に細菌が広がり、エナメル質が溶け、象牙質まで侵されていきます。

そして、痛みを感じるころには、すでに神経に達している可能性が高いのです。「しみるな…」と感じるのは、神経が炎症を起こし始めたサイン。「ズキズキする…」となると、もう神経が虫歯菌に冒されてしまい、最悪の場合は歯の根の治療や抜歯が必要になってしまうことも。

「もう少し様子を見よう」と思っているうちに、「抜かなければいけない状態」になってしまったら、後悔してもしきれませんよね。

虫歯の自然治癒は期待できない

「虫歯って、ほっといたら自然に治らないの?」
「体の傷は時間が経てば治るけど、歯も同じじゃないの?」

このように考える方もいるかもしれません。しかし、 結論から言うと、虫歯は自然に治ることはありません。むしろ、放置すればするほどどんどん悪化していくのが虫歯の特徴です。その理由を詳しく解説していきます。

1. 歯は「自己修復機能」がほとんどない

人間の体には、傷ができても時間が経てば治る「自己修復機能」が備わっています。

例えば、皮膚がすりむけた場合、数日でかさぶたができ、新しい皮膚が再生されます。しかし、 歯は「エナメル質」という硬い組織で覆われており、このエナメル質には再生能力がほとんどありません。

▶ 皮膚と歯の違い

  • 皮膚や骨 → 細胞が生まれ変わる(ターンオーバー) ため、時間とともに修復される
  • 歯 → 一度削れたり溶けたりすると、元に戻ることはない

つまり、虫歯によって一度溶けてしまった歯は、自然に元通りにはならないのです。

2. 唾液の力で「初期虫歯」は進行を遅らせることができるが…

「でも、歯の表面に穴が開く前なら、治ることもあるって聞いたことがあるけど…?」
実は、「ごく初期の虫歯」であれば、 唾液の作用によって進行を抑えることができる場合もあります。

▶ 唾液の役割

  • 再石灰化 → 唾液にはカルシウムやリン酸が含まれており、初期の脱灰(歯の表面の溶解)を補修する作用がある
  • 口内のpHを中和 → 虫歯菌が酸を出しても、唾液が酸を中和して歯を守る

しかし、 この作用で守れるのは、あくまでも「ごく初期」の段階まで。すでに エナメル質に穴が開いてしまったら、どんなに頑張っても自然には元に戻りません。

3. 虫歯は「進行性」の病気—放置すれば悪化するのみ

虫歯は 進行性の病気 であり、「少しずつ進行し続ける」特徴を持っています。痛みがないからといって安心していると、 気づかないうちにどんどん悪化 してしまうのです。

▶ 虫歯の進行段階

  • C0(ごく初期) → エナメル質が溶け始めた状態 → 唾液やフッ素で進行を抑えられる
  • C1(初期) → 歯の表面に小さな穴が開く → もう自然治癒は不可能
  • C2(中等度) → 虫歯が象牙質まで進行 → 痛みを感じ始める
  • C3(重度) → 神経に達して激痛 → 神経を取る治療が必要
  • C4(末期) → 歯の根まで虫歯菌が到達 → 抜歯が必要になる可能性が高い

4. 痛みがなくても安心できない「隠れ進行」に注意

「痛みがないうちは、そんなにひどくないんじゃない?」と思うかもしれません。しかし、 虫歯は痛みを感じないまま進行することもある ため、痛みがないからといって油断するのは危険です。

▶ 痛みを感じないまま進行するケース

  • 神経がまだ虫歯に侵されていない場合 → 初期の虫歯は無症状のことが多い
  • 神経が死んでしまった場合 → 痛みを感じなくなるが、虫歯が深刻な状態になっている

つまり、 痛みが出たときにはすでに「かなり進行している」と考えたほうがよい のです。

5. 虫歯の自然治癒を期待すると、結果的に治療費も時間もかかる

「もう少し様子を見ようかな」と放置してしまうと、治療がどんどん大がかりになり、最終的には 治療費も通院回数も増えてしまう ことになります。

▶ 治療の負担の違い

 

虫歯の進行度 治療方法 治療費 通院回数
初期(C1) 小さな詰め物(コンポジットレジン) 数千円 1回
中等度(C2) 詰め物(インレー)や被せ物(クラウン) 数千円~数万円 1~2回
重度(C3) 神経を取る治療(根管治療)+ 被せ物 数万円 3~5回
末期(C4) 抜歯+入れ歯 or インプラント 数万円~数十万円 数ヶ月

「早めに治療すれば短期間・低コストで済んだのに、放置したせいで大変なことに…」
そんな後悔をしないためにも、「自然に治るかも…」と思わず、できるだけ早く歯科医院で診てもらうことが大切です。

虫歯は進行性の疾患であり、自然に治癒することはありません。初期段階で適切な治療を受ければ、治療も簡単で短期間で済むことが多いです。しかし、放置すると症状は悪化し、治療が複雑化するだけでなく、通院回数や費用も増加します。

  • 虫歯は自然に治ることはない(歯のエナメル質には再生能力がない)
  • 唾液による再石灰化で「初期虫歯」の進行を遅らせることはできるが、 穴が開いたら治らない
  • 痛みがなくても進行する ため、放置すると治療が大変になる
  • 早期治療なら費用も負担も少なく済む

「まだ小さい虫歯だから大丈夫」と思わず、 早めの受診が歯を守るカギ です。少しでも気になる症状がある場合は、 ぜひ一度、歯科医院でチェックを受けてみてくださいね。

「痛くないから大丈夫」は危険!虫歯を放置するとこんな影響が…

虫歯は単なる歯の病気ではなく、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。
例えば、こんなリスクがあることをご存じでしょうか?

強烈な口臭が発生

・虫歯が進行すると、歯に空洞ができ、そこに食べかすや細菌が溜まります。

・これが発酵・腐敗し、強い口臭の原因に。いくら歯磨きを頑張っても、虫歯を治療しない限り口臭は改善しません。

虫歯が進行すると、歯に空洞ができ、そこに食べかすが溜まり腐敗します。これが強烈な口臭の原因となります。いくら歯磨きをしても、虫歯自体を治療しない限り、この口臭は解消されません。

神経が死んでしまう

・虫歯が歯の奥深くまで進行すると、神経が壊死して痛みを感じなくなることがあります。
・「痛みがなくなった=治った」ではなく、むしろ悪化している証拠。
・そのまま放置すると、歯の根に膿がたまり、抜歯が必要になるケースも少なくありません。

初期の虫歯を放置すると、やがて歯の神経まで達し、強い痛みを引き起こします。さらに放置すると、神経が死んで一時的に痛みが和らぐことがありますが、これは治癒ではなく、むしろ悪化している状態です。この段階では、歯の根の治療が必要となり、通院回数も増加します。

顎の骨に炎症が広がる

・虫歯菌が歯の根を超えて顎の骨に達すると、「骨髄炎」を引き起こす可能性があります。

・これは顔全体の腫れや激しい痛みを伴い、最悪の場合は手術が必要になることも…。

痛みがなくなった後も放置を続けると、感染が歯の根の先まで広がり、膿が溜まります。これにより、歯の根元が腫れ、顔全体が腫れることもあります。この場合、膿を除去するための治療が必要で、歯がボロボロになっている場合は抜歯が必要となることもあります。

心臓や脳にも影響が!?

・虫歯菌が血液を通じて全身に巡ると、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まると言われています。

・これは、歯周病と同様、細菌が血管内で炎症を起こすことで動脈硬化を引き起こすため。

・特に糖尿病などの持病がある方は、より注意が必要です。

副鼻腔炎(蓄膿症)を引き起こす

・上の奥歯の虫歯を放置すると、歯の根の細菌が副鼻腔に入り込み、副鼻腔炎を引き起こすことがあります。

・「風邪でもないのに鼻が詰まる」「鼻水が喉に流れる感じがする」などの症状が続く場合、虫歯が原因かもしれません。

全身への影響

虫歯を放置すると、以下のような全身的な健康リスクが生じる可能性があります。

骨髄炎の発症

虫歯菌が顎の骨に侵入し、骨髄炎を引き起こすことがあります。これにより、顎や顔が腫れ、口臭がひどくなり、激しい痛みを伴います。

心筋梗塞や脳梗塞のリスク増加

虫歯菌が血流に乗って全身を巡ることで、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾患を引き起こす可能性があります。特に基礎疾患がある方は注意が必要です。

副鼻腔炎への進行

特に上の歯の虫歯を放置すると、副鼻腔炎を引き起こすことがあります。細菌感染により炎症が起こり、放置すると蓄膿症になることもあります。

顎骨炎のリスク

放置した虫歯が原因で、顎の骨に炎症が起こることがあります。これにより、骨の変形や目、脳、扁桃腺などへの影響が生じ、最悪の場合、敗血症を発症し命を落とすこともあります。

これらのリスクを避けるためにも、虫歯は早期に発見し、適切な治療を受けることが重要です。定期的な歯科健診を受け、日頃からの口腔ケアを心掛けることで、虫歯の予防と早期発見が可能となります。

まとめ

後悔する前に!早めの治療が大切

「まだ大丈夫」と思っていた虫歯が、ある日突然激しい痛みを引き起こし、「もっと早く歯医者に行っておけばよかった…」と後悔する患者さんは少なくありません。

でも、今ならまだ間に合います。小さな虫歯の段階で治療を受ければ、簡単な処置で済みますし、費用も抑えられます。逆に放置すればするほど、治療が大変になり、歯を失うリスクも高くなります。

あなたの大切な歯を守るために、「痛くないから大丈夫」と思わず、ぜひ一度歯科医院でチェックを受けてみてくださいね。

この記事の監修者
医療法人真摯会 茨木クローバー歯科
院長 清水 博行

大阪歯科大学卒業 日本補綴歯科学会 日本口腔インプラント学会

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茨木クローバー歯科・矯正歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック