歯列矯正は健康保険がきかない自由診療なので費用が高くなってしまいます。どうして矯正治療には保険が使えないのか、どういう場合に保険適応になるかについてご説明します。
歯列矯正に保険がきかない理由
日本の医療制度の現状は、戦後の貧しい時代に発足した制度で、全ての国民が平等に気軽に医療にかかれるという点では優れています。
現代では国民が治療の質を求める時代になったため、病気のための最小限の治療をすれば良いという国民皆保険制度の考え方とはアンバランスが起きています。
医療制度の抜本的な見直しのないまま、保険料や国民の負担額を増やすという対処をしている現状では、病名のないもの(病気と医師が判断したもの以外)に関しては、保険はきかないというのが今後も変わらないと予想されます。
つまり矯正治療では「見た目を良くしたい」という、病気というよりはむしろ美容整形的なものと考えられており、今後もおそらくは医療保険の対象とはならないでしょう。
歯列矯正は基本的には保険がきかないが保険適用のケースもある
矯正治療は、自費診療(保険外診療)が基本です。例外的に手術を必要とする顎変形症や口唇・口蓋裂のような歯科医師が病気と判断するような場合は、歯列矯正でも保険対象となることもあります。それには次のようなケースがあります。
- 「厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療
- 前歯3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)に対する矯正歯科治療
- 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・手術後の矯正歯科治療
顎変形症は、上顎と下顎が上下左右、前後に大きくズレている状態のことで、重度の骨格性の受け口の場合は保険適応になる場合もあります。しかし保険で治療するためには、大人の場合は外科的な治療との組合わせが必要になります。
歯列矯正の保険適用には厳しい基準がある
ただし、顎変形症で健康保険が使えるのは、「顎口腔機能診断施設」の認定を受けている施設に限ります。その場合は、矯正治療費のほか、外科手術費、入院費にも健康保険が適応となります。この保険医療機関の名簿に関しては、地方厚生局ホームページに最新の情報が掲載されております。
口唇・口蓋裂は、日本人で約500人に1人の割合で出現する先天異常で、口唇裂はくちびるが、口蓋裂は上あごが、生まれつき割れている状態のことです。
歯列矯正と健康保険に関するQ&A
日本の医療保険制度は病名のある疾患を中心に設計されており、矯正治療は美容目的の治療と見なされるため、基本的に保険対象外となります。
顎変形症や口唇・口蓋裂など、歯科医師が病気と判断したケースや特定の咬合異常に対する矯正治療などは、例外的に保険対象となることがあります。
厚生労働大臣が定める疾患や前歯3歯以上の永久歯萌出不全、顎変形症など、特定の条件を満たしたケースのみ保険適用となる可能性があります。
まとめ
歯の矯正治療が基本的には保険診療が適用されないことをご理解いただけましたでしょうか?当院では、顎変形症、口唇・口蓋裂などの手術が必要な患者さんは顎口腔機能診断施設の提携病院や大学病院を紹介させていただきます。