歯並びが気になって治療したいと思っている方は多くおられると思います。歯並びを治す矯正治療には、歯全体を動かす矯正治療だけでなく、前歯だけの歯並びを治療する部分矯正や、セラミックの被せ物で歯並びをきれいに見せる方法などもあります。
前歯の歯並びが悪い場合の影響と治療方法についてご説明します。
前歯の歯並びが悪いとどんな問題が起こる?
前歯に不正咬合があると、以下のような問題が起こります。
1. 見た目の悪さがコンプレックスに繋がる
前歯の不正咬合で他人からはっきりと歯並びが悪い状態がわかってしまうと、それがコンプレックスになって大きな口を開けて笑えない、口元を隠して話すなどの行動に繋がる場合があります。
2. 虫歯のリスクが高くなる
前歯に重なりやガタガタがあると、その部分に食べかすがたまりやすくなり、時間がたつと食べかすは歯垢に変わり、その中には多くの細菌が繁殖します。
歯垢はそのままにしておくとやがて歯石に変わり、歯磨きでは落とせなくなります。歯垢と歯石は虫歯や歯周病の大きな原因になりますので、前歯の歯並びが悪いと虫歯のリスクが高くなるということになります。
3. 歯茎が下がってしまう
顎が小さくて歯が一列に並びきるだけの隙間がない場合、歯が歯列から飛び出して他の歯と重なってしまうことがあります。その場合、歯茎が下がることがあり、歯が長く見えて見た目も悪くなってしまいます。
4. 歯周病の進行が早まる
30代以降になると少しずつ歯周病のリスクが高まります。前歯の歯並びが悪いと歯磨きがしにくく、歯と歯茎の間に歯垢がたまりやすい為、歯周病の進行が早まります。
5. 顎関節症のリスク
不正咬合があると噛み合わせにも問題が起こっている場合が多く、噛みにくいため顎をずらして噛むと顎関節症を発症しやすくなります。顎関節の痛みや口を開閉すると顎関節から音がする、口を開けづらいなどの症状がある場合は、顎関節症が疑われます。
部分矯正では治らない歯並び
部分矯正では主に前歯の2~8本程度の治療が可能です。但し、不正咬合の状態によっては部分矯正が難しい場合があります。部分矯正で治療の出来ない不正咬合は以下のようなものです。
1.前歯が重度のガタガタ
前歯の重なりが大きい場合は抜歯矯正の必要があり、部分矯正では治療出来ません。
2.八重歯
八重歯は主に中央から3番目の歯が唇側へ歯列から大きく飛び出している不正咬合のことをいいます。八重歯の治療には通常は抜歯が必要ですので、部分矯正では治療出来ません。
3.中度以上の出っ歯・受け口
中度以上の出っ歯・受け口も抜歯矯正の対象になりますので、部分矯正では治療出来ません。
4.開咬
開咬は奥歯を噛んだ時に上下の前歯が開いて噛み合わない状態をいいます。噛み合わせの治療が必要になりますので、部分矯正では行うことが出来ません。
まとめ
前歯の歯並びが悪いと、見た目のコンプレックス、虫歯や歯周病のリスク増加、顎関節症の可能性など、様々な問題が生じます。
前歯の不正咬合の治療方法としては部分矯正がありますが、重度の歯並びの問題や特定の咬合不正には適さない場合もあります。適切な診断と治療計画のもと、矯正治療やセラミックの被せ物など、個々の状況に合った治療を選択することが重要です。
前歯の歯並びが悪い場合には、いくつかの問題が生じる可能性があります。以下に、このトピックに関する2件の研究を紹介します。
1. Wirtz et al. (2021) の研究によると、歯や顎の不正咬合は、噛む能力や発声に影響を与える可能性があります。さらに、歯周病や虫歯のリスクが高まる可能性もあり、心理的な幸福感にも影響を与えることが示唆されています。【Wirtz et al., 2021】
2. Zou et al. (2018) の研究は、不正咬合が子供の歯の発達に様々な影響を及ぼすことを示しています。歯の虫歯、根尖病変、歯の外傷、発達異常、口腔の習慣などが不正咬合と強く関連しているとされています。早期の口腔衛生管理により、これらの問題の影響を軽減し、不正咬合を予防または緩和することができます。【Zou et al., 2018】
これらの研究から、前歯の歯並びが悪いことは、噛む機能や話す能力、歯周病や虫歯のリスクに影響を及ぼし、また子供の歯の発達にも影響を与える可能性があると結論づけられます。