お正月によく食べるお餅ですが、お餅は歯に悪いと言われる噂をご存知でしょうか。お正月にお餅を食べる習慣は平安時代までさかのぼると言われています。その由来の一つが、宮中で行われていた歯固めの儀というお正月行事で、健康や長寿を願う意味が込められていたそうです。
お餅はよく伸びる一方でいつまでも伸び続けるわけではないことから、長寿祈願と結び付けられてきたとも伝えられています。今回は、お餅を食べるときに起こりやすい歯のトラブルについて、わかりやすく簡単にお話しし、予防して楽しめるようにしましょう。
目次
お餅は本当に歯に悪いのか?
お餅が歯に悪いと検索する人が多いのは、お正月などでお餅を食べる機会が増え、その際に詰め物が取れた、歯が痛い、歯にくっついて気持ち悪いといったトラブルが起きやすいからです。結論から言うと、お餅そのものが毒のように歯を溶かすわけではありません。ただし、お餅は歯に悪いと感じやすい特徴がそろっており、食べ方や口腔ケア次第でリスクが上がる可能性があります。特に注意したい点を挙げます。
虫歯のリスク
お餅は炭水化物で糖質があり、口の中に残りやすい
補綴物へのリスク
詰め物や被せ物が粘着性により引っ張られる力がかかりやすい
お餅は歯に悪いとイコールで捉えるのではなく、条件がそろうとトラブルが起きやすい食べ物というのが実態です。
お餅が歯に悪いと言われる3つの理由
お餅が歯に悪いと疑われがちな理由は、主にこの3つです。
① 粘着性が高く、歯にくっつきやすい
歯の溝や、歯と歯の間、詰め物の境目などに残りやすく、だらだら食べると口の中が汚れた状態のまま長時間継続してしまいます。
② 糖質が多く、細菌のエサになり得る
砂糖たっぷりのお菓子ほどではないにせよ、糖質なので油断は禁物です。食べる回数、時間が増えるほど影響が出ます。口の中の細菌が糖分を分解して酸を産生し、酸が付着した歯が溶ける脱灰を起こして進行するむし歯になり得ます。
③ 噛む時に伸びる・粘るため、歯や治療物に負担がかかる
サクッと切れるにんじんなどの食べ物と違い、お餅は噛んだ時に歯へまとわりつき、離れる時に歯を引っ張る力が働きます。治療から年数が経っている詰め物であれば、お餅の力が歯にかかり、トラブルが起きやすいです。
虫歯リスク
一番誤解が多いのが虫歯です。お餅は甘いお菓子に比べると砂糖感が少ないので、つい歯へのケアが雑になりがちですが、虫歯になりやすいのは、甘いかどうかだけではなく、糖質があるかどうかです。口の中に長く残ってしまうと、むし歯菌が産生した酸で歯の表面のエナメル質のミネラルが溶けていきます。 また、お餅は粘着性があるため、次のような状態を作りやすいです。
- 歯の溝に入り込んで取りにくい
- 歯間に残って気づきにくい
- だらだら食べると、口の中が酸性に傾く時間が増えやすい
お餅は味付けでリスクが更に上がります。砂糖醤油、あんこ、きな粉砂糖などを付けたお餅は、糖分が増えるのでより注意が必要です。
詰め物や被せ物が取れるのはなぜ?餅の粘着力問題
お餅を食べて銀歯の詰め物が取れたという話はよくあります。通常、健康な環境にある歯の詰め物がお餅を食べただけで簡単に取れることは多くないです。ではなぜ取れるのでしょうか。お餅を食べた以外に何が原因だったのかを挙げてみましょう。
接着剤の劣化
月日の経過による接着剤の劣化などで、歯科用の接着剤は外れてしまうことがあります。
詰め物の下で虫歯が進んでいる
詰め物と歯の間に隙間があるとその部分から菌が侵入します。詰め物の下でいわゆる二次むし歯が進行すると、接着剤との密着が悪くなることがあります。
噛み合わせや歯ぎしりの負担
噛み合わせが微妙にずれたり、過剰な力をかけていると、境目が傷みやすいです。
古い詰め物や被せ物ほどリスクが上がる
歯科で治療してもらったのが古い場合は、粘着性食品が最後の一押しになりやすいです。
お餅はくっついた後引っ張るという動きが起きやすく、境目にわずかな隙間があると、そこに入り込んで外れやすくなります。
歯や顎への負担
お餅で起きるのは詰め物などのトラブルだけではありません。次のような口腔状態の人は、お餅を食べると歯や顎に負担が出やすいです。
- 噛む力が強く食いしばりがある
- 歯に細かいヒビが入りやすい
- 治療した歯が多く神経を取った歯がある
- 顎関節に不安がある
お餅は、口の中でまとまりにくく伸びたりするため、無意識に強く噛み込むことがあります。奥歯がズキッとした、顎がだるい、噛むと違和感があるといった症状があれば、一口のサイズを小さくし、柔らかめの調理にするなどの工夫が有効です。
要注意の人チェック
口腔状態は問題なくても、お餅を食べる時に歯を悪くしそうな時があります。チェックして、該当が多ければ多いほど、食べ方とケアを丁寧にしましょう。
矯正治療中で、ワイヤーやブラケットを装着して絡みやすい
仮歯や治療中の歯があり、接着が弱い
入れ歯を使用していて外れたり、噛みづらくなりやすい
被せ物や詰め物が古く、取れたことがある
歯ぎしり、食いしばりの癖がある
歯周病で歯が揺れたり、歯茎が下がっている
去年は平気だったのに今年はダメだったというケースもあります。これはお餅がどうというよりも、口の中のコンディションが変化している可能性があります。
歯に悪いのは避けたいけどお餅も食べたい!食べ方のコツ
お餅が好きな方はいきなりやめるのはつらいでしょう。食べ方を変える方が現実的です。くっつきにくく、引っ張りにくく、残しにくくするのがポイントです。
食べ方の変化
お餅の食べ方について、このようなポイントを押さえておきましょう。
一口を小さくする
お餅が大きいほど粘着性や牽引力が強くなるため、小さめに切っておく
口の中を潤してから食べる
お茶や水で口腔内を潤しておくと、付着しにくくなる
よく噛んで、急がず飲み込む
伸びたまま飲み込んり、慌てて食べるのは危険
熱いお餅より、少しぬるめの温度にする
熱いお餅はベタつきが強いため、それを避ける
砂糖多めの味付けは控える
あんこ、砂糖醤油の味付けばかりは糖分が多くなり、口腔環境のリスクが上がる
詰め物が心配な人
詰め物が心配な人は更にこのような点に気を付けてください。
片側ばかりで噛まない
過度な負担が集中しがちになる
違和感が出たら、その場で中止
我慢すれば全部食べ切れるなどはせず、違和感を感じたら終了する
硬めに焼いたお餅は、歯への負担が増えることがあるので注意しましょう。
食べた後のケア
お餅を食べた後は、通常より丁寧に歯の清掃を行いましょう。歯に残りやすいので、放置するとリスクが上がります。
- ぶくぶくうがいで大きな食べかすを流す
- 奥歯の溝、詰め物の境目など歯ブラシで重点的に磨く
- デンタルフロスや歯間ブラシで歯間に残りやすい部分を掃除
歯間は見えないのに残りやすい部分で、歯磨きしたのに、フロスしたらお餅が出てきたというのは珍しくありません。虫歯予防では、糖質の摂取頻度や、口腔内を清潔に保つことが大切です。また、フッ素入りの歯磨き剤の活用も、歯質を強くする方向で有効とされています。
もし詰め物が取れたら?家でやること及びNG行動
お餅を食べて詰め物が取れたときは、自力で戻さないこと、悪化を防ぐこと、早めに受診することが重要です。
家でやること
家でやることを挙げてみましょう。
取れた詰め物は清潔に保管
詰め物は、ティッシュなどに包まず、小さなポリ袋や容器にいれて保管してください。ティッシュで包むと、謝って捨ててしまったり、変形したりします。むし歯になってなければ、そのまま取れた詰め物を消毒し調整し、再装着できる場合があります。
取れた部分はやさしく清掃
取れた部分を強くこすりすぎず、優しく清掃してください。
しみたり、痛いときは刺激物を避ける
辛いもの、熱いもの、冷たいものなどの刺激は避け、まだ痛む場合は痛み止めで調整しましょう。
できるだけ早めに歯科受診
詰め物を詰めていた歯の部分において、早めの処置が必要となることがあります。痛みがないからと放置すると、悪化する可能性が高くなります。
絶対にNGなこと
絶対にNGなことを挙げてみます。
瞬間接着剤などで自分で付ける
歯科用接着剤は人体に使える接着剤ですが、瞬間接着剤の成分は人体への安全性が保証されていません。また、接着ができず、反対にその部分が炎症を起こすなどのトラブルにつながります。
よくある質問
お餅に関する質問についてまとめました。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| Q1. 餅は毎日食べたら歯に悪い? | A. 量よりも頻度とだらだら食べが影響しやすい。食後にケアできるタイミングで、短時間で食べ切る方がリスクは下がる |
| Q2. 餅で詰め物が取れるのは治療が失敗? | A. 年数による劣化、虫歯の再発、噛み合わせの変化などが重なると、粘着性食品がきっかけになることがある |
| Q3. 餅を食べた直後、すぐ歯磨きしていい? | A. 餅は強い酸性食品ではないので、基本は食後の歯磨きでOK。歯間が気になる人は、フロスもセットにすると安心 |
| Q4. 子どもは特に注意した方がいい? | A. くっつきやすい食品は磨き残しが増えやすく、食後の仕上げ磨きが大切。味付けが甘いほど注意 |
まとめ
お餅が歯に悪いというのは半分本当で、半分誤解です。歯にくっつきやすく、糖質なので虫歯環境を作ってしまいます。詰め物や被せ物を引っ張る力がかかりやすいという特徴から、トラブルが起きやすい食べ物です。
一口を小さくしたり、口を潤してゆっくり噛み、食後はうがいや歯磨き、歯間ケアを徹底すれば、お餅を楽しみながらリスクを下げられます。詰め物が取れた、噛むと痛い、違和感が続くなどあれば、自己判断せず、早めに歯科へ相談してください。




