歯と口のトラブル

ドライマウスの原因とは?

ドライマウスの原因って何?

茨木クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 脇田 悠仁

ドライマウスとは、お口の中が乾燥し、味覚障害や口内の痛みを伴う病気を指します。ドライマウスとはどういう状態で、なぜ起こるのかについてご説明します。

ドライマウスとは?

ドライマウスは、唾液の分泌が不十分で口の中が常に乾燥している状態を指します。これは単なる口内が乾くという不快感にとどまらず、食事の嚥下困難、味覚の変化、口臭の悪化、そして歯や歯肉の病気のリスク増加につながることもあります。

一般的な症状には、口の乾燥、ネバネバした唾液、口内の不快感、食べ物を飲み込みにくい、味が分かりにくい、口臭などがあげられます。

ドライマウスの原因は?

ドライマウスはさまざまな要因によって引き起こされることがあります。最も一般的な原因の一つが脱水症状です。体内の水分が不足すると、当然ながら唾液の分泌も減少します。

また、多くの薬剤、特に抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、抗高血圧薬などは口の乾燥を副作用として引き起こすことが知られています。さらに、糖尿病やシェーグレン症候群のような疾患、放射線療法などの医療処置も、唾液腺を損傷し、ドライマウスの原因となり得ます。生活習慣、特に不十分な水分摂取、口呼吸、喫煙、アルコール消費もドライマウスを引き起こす可能性があります。

1. 薬剤が引き起こすドライマウス

多くの薬剤がドライマウスの一般的な副作用として知られており、これには抗うつ薬、抗不安薬、抗高血圧薬、抗ヒスタミン薬、利尿薬、などが含まれます。

これらの薬剤は唾液腺の機能に影響を及ぼし、唾液の分泌を抑制します。薬剤によるドライマウスではないかとの疑いがある場合、医師に相談して、可能であれば代替薬への変更や用量の調整を検討することが大切です。

2. 病気の症状や特定の療法によるドライマウス

自己免疫疾患の一つであるシェーグレン症候群は、唾液腺と涙腺の機能低下を特徴とし、これがドライマウスおよびドライアイの原因となります。

また、糖尿病患者はドライマウスを経験するリスクが高いとされています。放射線療法、特に頭頸部への照射は、唾液腺の損傷を引き起こし、ドライマウスの原因となることがあります。

3. 生活習慣が引き起こすドライマウス

生活習慣が引き起こすドライマウスにはいくつかの要因が関与していますのでご説明します。

1. 不十分な水分摂取

水分は体内の多くの機能を維持する上で不可欠であり、唾液の分泌にも重要な役割を果たします。十分な水分を摂取しないと、身体は脱水状態に陥り、唾液の分泌も自然と減少します。特に夏場や運動後など、体が通常より多くの水分を必要とする状況では、積極的に水分補給を行うことが重要です。

2. 口呼吸

鼻呼吸は空気を加湿、浄化し、適切な温度に調整して気管に送り込む役割を持っています。しかし、鼻が詰まっている、アレルギーがある、睡眠中に無意識に口を開けるなどの理由で口呼吸をしてしまうと、口内が乾燥しやすくなります。特に、長時間口呼吸をしてしまうと、唾液の自然な流れが妨げられ、ドライマウスの症状が顕著になることがあります。

3. 喫煙

タバコの煙に含まれる化学物質は、口腔内の粘膜を刺激し、唾液の分泌を抑制することが知られています。また、ニコチンには血管を収縮させる作用があり、これが唾液腺の血流を減少させ、結果として唾液の分泌が低下する原因となります。長期的な喫煙は、ドライマウスだけでなく、歯周病や口腔がんのリスクを高めることもあるため、注意が必要です。

4. アルコール消費

アルコールは利尿作用があり、身体から水分が排出されやすくなります。その結果、脱水状態になりやすく、唾液の分泌量も減少します。特に、アルコールを含む口内洗浄液は、直接的に口腔内を乾燥させる可能性があります。適度なアルコール消費は問題ありませんが、過度な摂取はドライマウスの原因となることがあるため、使用や摂取には注意が必要です。

これらの生活習慣を見直し、改善することで、ドライマウスの予防と改善が期待できます。適切な水分摂取、鼻呼吸の習慣化、禁煙、適度なアルコール消費など、日常生活の小さな変化が、口腔内の健康を守ることに繋がります。

4. ストレス過多

緊張により、お口がからからに乾いたと感じた経験はありませんか。人はストレス状態で自律神経(交感神経・副交感神経)の働きで、唾液が抑制されます。

5. 柔らかい食べ物ばかりの食生活でお口周りの筋力が低下

固い食品が少なくなり、現代において噛む回数は極端に低下しています。唾液腺(唾液を出す部分)は、周囲の筋肉により唾液を分泌しますが、現代人は咀嚼回数や食事時間の短縮で、噛む回数が減少したことにより、唾液の分泌量も低下しています。

ドライマウスのセルフチェック

ドライマウスは自覚しにくく、お口の中が乾いていると気付かずに日常生活を送っている方が多いです。ドライマウスになっていないか、以下の症状について、当てはまるものがないか一度ご確認ください。








さまざまな症状がありますが、上記の中から当てはまるものがあると思われる方は、ドライマウスの可能性が高いです。

ドライマウスの治療方法は?

ドライマウスの治療は、原因や症状の程度によって医師が判断します。一般的な治療法としては以下のようなものがあります。

1.唾液補充療法

口内の乾燥をおさえるために人工唾液や口腔内潤滑剤が使われます。これらはスプレー、ジェル、口腔内洗浄剤などの種類があります。

2.薬物療法

ピロカルピンやセベリム(商標名)などの薬剤が唾液腺を刺激して唾液の分泌を促進させます。これらの薬物は副作用がありますので、医師と相談の上で服用しましょう。

3.生活習慣の改善

水分を十分に摂取し、カフェインやアルコールの摂取を控えることで唾液の分泌を促進させることが期待できます。無糖のガムを噛むことによっても唾液が分泌されやすくなります。

4.口腔衛生の改善

ドライマウスは虫歯や歯周病のリスクを高めるため、毎日の丁寧な歯磨きと定期的に歯科健診を受けることが必要です。フッ素を含む歯磨き剤を使用することが推奨されます。

5.原因疾患の治療

ドライマウスの原因がシェーグレン症候群や糖尿病などの他の疾患である場合は、その病気の治療が必要になります。

ドライマウスの原因に関するQ&A

ドライマウスの原因は何ですか?

ドライマウスの原因は様々ですが、主な要因は以下のようになります。
1. ストレス過多による自律神経の乱れ
2. 喫煙やカフェイン、アルコールなどの嗜好品の摂取過多
3. 口腔に影響する副作用を持つ薬の服用
4. 口呼吸による口内の乾燥
5. 柔らかい食生活による口周りの筋力低下
6. 糖尿病やシェーグレン症候群、腎不全などの疾患による影響

ドライマウスの治療方法は何ですか?

ドライマウスの治療方法は以下のようなものがあります。
1. 唾液補充療法: 人工唾液や口腔内潤滑剤を使用して口内の乾燥を緩和します。
2. 薬物療法: 唾液の分泌を促進する薬剤の使用が考えられますが、副作用に注意が必要です。
3. 生活習慣の改善: 十分な水分摂取やカフェイン・アルコールの制限、無糖のガム噛むなどで唾液の分泌を促進します。
4. 口腔衛生の改善: 歯磨きや定期的な歯科健診を行い、口腔内の健康を保ちます。
5. 原因疾患の治療: シェーグレン症候群や糖尿病などの原因疾患の適切な治療が必要です。

ドライマウスを予防する方法はありますか?

ドライマウスを予防するためには以下のような対策が役立ちます。
1.十分な水分摂取: 日常的に十分な水を飲むことで口内の乾燥を防ぎます。
2.健康的な食生活: 栄養バランスの取れた食事と、噛む回数の増加を意識しましょう。
3.嗜好品の制限: 喫煙やカフェイン、アルコールの過剰摂取を控えることで唾液の減少を防ぎます。
4.正しい呼吸法: 口呼吸を改善し、鼻で呼吸するよう心掛けます。
5.正しい口腔ケア: 歯磨きや歯科健診を欠かさず行い、口腔内の健康を維持します。

まとめ

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ドライマウスの原因と状態についてご説明しました。虫歯などの感染症を防ぐためにも、ドライマウスは出来るだけ改善した方が良いと考えます。耳のそばや顎の下あたりをやさしくマッサージして唾液の分泌を改善する方法がありますが、噛み合わせも気になるなどお口に関するお悩みをお持ちの方は、一度歯科医院に足を運び、歯科医師やスタッフへご相談くださればと思います。

ドライマウス(口内の乾燥)の原因に関して、以下の2つの研究が見つかりました。

1. ドライマウスは様々な原因があることが知られていますが、最も一般的な原因の一つは、特に抗コリン作用があるM3ムスカリン受容体に対しての薬剤によるものです。これらの薬剤には、特に抗ムスカリン剤、いくつかの交感神経作動薬、セロトニンやノルアドレナリンの取り込みに影響を与える薬剤などがあります。[Scully, 2003]

2. ドライマウスのもう一つの一般的な原因は、自己免疫疾患(シェーグレン症候群)、がんの放射線療法や化学療法、ホルモン異常や感染症などによるものです。これらの条件は口の乾燥感を引き起こし、多くの場合、治療が困難です。[Furness et al., 2011]

これらの研究は、ドライマウスの原因を理解する上で重要な情報を提供しています。

この記事の監修者
医療法人真摯会 茨木クローバー歯科
院長 脇田 悠仁

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本成人矯正歯科学会。日本臨床歯科学会(大阪SJCD) 学術委員・査読委員 兼任。日本臨床CADCAM学会。

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