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子どもが口呼吸になる理由と改善策を教えて

子どもが口呼吸になる理由と改善策を教えて

茨木クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 脇田 悠仁

近年、子どもの口呼吸が問題になってきています。口呼吸になる理由と改善策について説明します。

口呼吸になってしまう原因・理由

子供

口呼吸が原因で口腔機能発達不全性になっている子どもたちが増えています。子どもが口呼吸になってしまう理由は、舌や口腔内の筋肉が十分に発達していないことが考えられますが、それを引き起こしたと考えられる原因は次の4つです。

  1. 離乳食を与える時期が早い
  2. 前歯で噛ませていない
  3. 口腔機能の発達を狙った食事がなされていない
  4. 鼻で息ができないことを理由に、鼻で呼吸をさせていない

一つひとつ詳しくみていきましょう。

1.離乳食を始める時期が早い

離乳食

理由の1つ目は、離乳食を始める時期が早すぎることです。それは離乳食を始める時期について、母子手帳に「生後5〜6ヶ月を目安に」と記載されていることと無関係ではありません。厚生労働省は2019年に「授乳・離乳の支援ガイド」を改訂していますが、そこにも離乳初期は「生後5〜6ヶ月」と記載されています。

あまり早い時期に離乳食を始めてしまうと、口腔機能の発育が止まってしまいます。授乳時には舌の力を使ってお母さんのおっぱいを飲むのですが、離乳食は飲み込みやすいように調理されているため、舌の力を使わなくても飲み込めるようになってしまいます。そのため舌や口腔内の筋肉に十分な力がつかない原因になっていると考えられています。

改善策としては、離乳食をあまり細かくしすぎずに、赤ちゃんが前歯で噛んで食べ物を引きちぎって食べれる程度の大きさに調理するということがあげられます。

歯で食べ物を引きちぎったり、舌を使う訓練が出来、きちんと飲み込めたかを注意深く確認しながら、口腔機能を発育・成長させます。

2.前歯で噛ませていない

子供

2つ目の理由は、赤ちゃんが離乳食を前歯で引きちぎる動きをさせていないということです。その動きをさせることで、前歯に力がかかって上顎や奥歯の骨の成長が促進されます。

なるべく歯や舌やお口の筋肉を使わせることで、赤ちゃんの口腔機能が発達していき、きちんと鼻で呼吸出来ることに繋がるのです。

大手食品メーカー「江崎グリコ」が発表した研究結果に、ポッキーを前歯で噛んだときと奥歯で噛んだときを比較して、脳の血流量に違いが見られるかの実験があります。

その結果、ポッキーを前歯で噛んだ方が、奥歯で噛んだ時と比べて脳の血流量がアップすることがわかりました。つまり、赤ちゃんに前歯で噛ませるようにすると、脳の発育にも良い影響があるといえます。

3.舌や頬の筋肉などの口腔機能の発育・発達のための食事がなされていない

子供

3つ目の理由は、舌やお口周りの筋肉の発育・発達のための適切な食事がなされていないことです。

口腔機能の発育・発達のための食事とは、前歯で噛み切ってから良く噛んで食べる、適切な大きさと固さのある食事のことです。

一般的な離乳食は、小さく切るかドロドロに煮込んで柔らかい状態にするなど、食べやすさを基本に考えられています。その方がお子さんのために良いと思われがちです。

お子さんがもう少し大きくなると、ハンバーグやオムライス、カレーライス、ラーメンなど、子どもが好むメニューが中心になります。主に子どもにとっての食べやすさを第1に考えた食事となっています。

ところが残念ながら、これら子どもが好む食べ物は柔らかいものが中心で、あまり噛まずに飲み込めるものです。

口腔機能の発育・発達のための食事とは、前歯を使って噛み切り、よく噛んで食べる食事です。そうしなければ噛むという習慣が身につかず、舌や頬、顎などの筋肉が発達せず、口呼吸の原因になってしまうからです。子どもにとっては、舌や顎などの発育を促すような食事がとても大切です。

4.鼻詰まりなどで鼻で息ができないことを理由に、親が口呼吸を許している

子供

4つ目は、お子さんが鼻で息ができないために普段から鼻で呼吸をさせていないことです。しかし、鼻が詰まることがあるからといって、普段から口呼吸をすることは好ましくありません。

口呼吸を続けると舌や頬の筋肉などのお口の周辺の筋肉を鍛えることが出来ず、適切な発達を妨げます。

少しずつでも鼻呼吸の練習をさせてあげれば、お子さんは徐々に鼻呼吸に慣れ、口呼吸から鼻呼吸に変わるきっかけになります。

口呼吸の改善方法は?

口呼吸を改善して鼻呼吸出来るようにするための3つの方法をご紹介します。

  1. 寝ている間、口にサージカルテープを貼る
  2. 片方の歯でばかり噛まずバランス良く両方の歯で噛む
  3. あいうべ体操

1.寝ている間、口にサージカルテープを貼る

お口の中央に縦にサージカルテープを貼り、寝ている間に口が開かないようにします。「鼻呼吸テープ」、「鼻腔拡張テープ」などの名称でドラッグストアで市販されています。

2.片方の歯でばかり噛まずバランス良く両方の歯で噛む

舌やお口の筋肉の発育を促進するためには、両方の奥歯でバランスよくしっかり噛むことが大切です。ガムを左右の奥歯で噛むことで咀嚼筋を鍛えて、舌を正しい位置に戻すという方法もあります。

3.あいうべ体操

あいうべ体操

あいうべ体操は、お口の周りの筋肉を鍛えて舌の位置を正しい位置になおすための簡単な体操です。以下の①~④を10回を1セットとして、1日3セットを目易く毎日行いましょう。声は出さなくても大丈夫です。

  1. 「あー」と口を大きく開く
  2. 「いー」と口を横に大きく開く
  3. 「うー」と口をすぼめてできるだけ前に突き出す
  4. 「べー」と舌をできるだけ下へ伸ばす

子供の口呼吸にはどんな影響があるの?

子供の口呼吸は危険なの?

鼻呼吸をすると、鼻がフィルターの役割をしてくれて、空気からゴミや埃やウィルスなどを除去してくれます。しかし口呼吸の場合は、フィルターの機能がありませんので、直接喉から気管に入ってしまい、風邪やアレルギーの原因になります。

それ以外にも、常にお口が開いた状態になっている為、いびきをかいたり、クチャクチャ音を立てて食べるなどの特徴があり、睡眠障害や消化不良になるリスクがあります。

口呼吸の身体への影響は?

子どもが口呼吸になる理由と改善策に関するQ&A

子どもが口呼吸になる理由は何ですか?

子どもが口呼吸になる理由は、以下の4つが考えられます。
1. 離乳食を始める時期が早いこと
2. 前歯で噛ませていないこと
3. 口腔機能の発育を促す食事がなされていないこと
4. 鼻で息ができないことを理由に、鼻で呼吸をさせていないこと

離乳食を始める時期が早いと口呼吸になるのはなぜですか?

離乳食を早期に始めると、口腔機能の発育が適切に行われず、口呼吸につながる可能性があります。離乳食は舌の力を使わずに飲み込めるように調理されているため、舌や口腔内の筋肉の発達が不十分になる原因となります。

前歯で噛ませないと口呼吸になるのはなぜですか?

前歯で噛む動作をさせないと、上顎や奥歯の骨の成長が促進されず、口腔機能の発達が妨げられます。前歯に力がかかることで、口腔の筋肉が発達し、鼻で呼吸することができるようになります。

まとめ

子どもの離乳食

日本の子供の8割が口呼吸になっています。口呼吸になる理由は様々ですが、口呼吸を鼻呼吸に治すことに取り組んでいる歯科医院が増えています。ご自宅ですぐに出来る舌や頬などお口の周りの筋肉を使うトレーニングの方法がありますので、ぜひ始めていただきたいと思います。

子どもが口呼吸になる主な理由は、アデノイドや扁桃腺の肥大、アレルギー性鼻炎、鼻中隔の偏位など、上気道の閉塞に関連する問題です。これらの問題は、鼻を通しての呼吸が困難になり、口を通しての呼吸に頼るようになるためです。口呼吸は、顔面の成長に影響を与え、マロクルージョン(咬合異常)の原因となることがあります。

改善策としては、口呼吸の原因に応じた治療が必要です。アデノイドや扁桃腺の肥大が原因の場合、外科的な介入による除去が考えられます。アレルギー性鼻炎が原因の場合は、アレルギーの管理と治療が必要です。また、鼻中隔の偏位が原因の場合は、外科的矯正が必要な場合があります。

また、口呼吸が原因で生じるマロクルージョンに対しては、矯正歯科治療が有効です。インターセプティブ矯正治療、特に急速な上顎拡大治療は、口呼吸によって引き起こされるマロクルージョンの子どもに利益をもたらすことができます。この治療は、上顎の幅を広げ、鼻腔の通過を改善し、結果として口呼吸を減少させることができます。【Achmad, 2022

口呼吸の子どもでは、頭部の姿勢にも変化が見られることがあります。口呼吸をする子どもは、頭部を前方に傾ける傾向があり、これが長期にわたると、顔面の成長に悪影響を及ぼす可能性があります。したがって、口呼吸の早期発見と適切な治療は、顔面の正常な成長を促進し、将来のマロクルージョンのリスクを減らすために重要です。【Shrivastava & Thomas, 2012

この記事の監修者
医療法人真摯会 茨木クローバー歯科
院長 脇田 悠仁

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本成人矯正歯科学会。日本臨床歯科学会(大阪SJCD) 学術委員・査読委員 兼任。日本臨床CADCAM学会。

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