歯並びの乱れ、いわゆるガチャ歯に悩む人が日本では非常に多く見られます。ガチャ歯は相手に良くない印象を与えてしまうこともあるため、できるだけ改善したいと考える方も少なくありません。この記事では、ガチャ歯がどのような状態なのか、その特徴や原因、そして治療の方法について詳しく解説していきます。
ガチャ歯ってどんな歯並び？
ガチャ歯という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。ただし、これは一般的な俗称であり、医学的には叢生（そうせい）、または乱杭歯（らんぐいば）と呼ばれる状態を指します。
- 歯が重なり合って生えている
- 歯が前後にずれている
- 歯がねじれて斜めに生えている
- 歯列のアーチが乱れ、全体的にガタガタして見える
- 前歯や犬歯など一部の歯列のみに乱れがある
きれいなアーチ型に並んでおらず、凸凹した歯並びがガチャ歯とされます。歯並びの乱れを実感しやすく、見た目の印象を改善したいと矯正を考えるきっかけになることも多いです。
どのようにガチャ歯が起こる？原因は？
ガチャ歯が起こる背景には、いくつかの原因が考えられます。代表的なものを挙げていきましょう。
顎の大きさと歯の大きさのアンバランス
現代人は、昔と比べて顎が小さくなっている傾向があると言われます。昔は、親知らずの歯まで食べ物を噛む動作に使用していたほど、顎の広さが現代人よりも大きかったようです。顎が発達しなくなった現代人ですが、一方で歯の大きさはあまり変わらないため、その結果、歯列をきれいに並べるスペースが足りなくなってしまいます。そのため、歯同士が重なったり、ずれたりしてしまうのです。
乳歯から永久歯への生え変わりのタイミングや状況
乳歯が抜けた後、永久歯が生えてくる際にスペースが十分でない場合、歯が正しい位置に並ばず、回転したり重なったりすることがあります。特に、乳歯と乳歯の間に隙間がなく並んでいた場合、より大きさのある永久歯のためのスペースがなくなり、ガチャ歯になりやすいと指摘されています。
遺伝および骨格の先天的要因
顎の骨格の大きさ、形、歯の大きさなどは遺伝の影響を受ける場合があります。そのため、両親の歯並びや骨格の特徴が子どもに受け継がれることで、先天的にガチャ歯になりやすくなることがあります。
生活習慣や癖、呼吸の仕方などの後天的要因
幼少期に指しゃぶり、舌で歯を押す癖、爪をかむ、口呼吸、猫背などは、歯並びに影響する可能性があります。特に口呼吸を常に行っていると、舌の位置が正しいスポットから下がります。それにより、上あごの成長が抑制され、歯が並ぶスペースが狭くなりやすいと考えられています。
ガチャ歯がもたらす影響
ガチャ歯は単に見た目が悪いというだけではありません。口腔の健康や全身にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
虫歯や歯周病のリスクが高まる
歯と歯が重なったり密接していると、歯ブラシやデンタルフロスが届きにくく、食べかすや歯垢（プラーク）が残りやすくなります。歯に付着したまま放置してしまうと、虫歯や歯周病のリスクが上がります。きちんと食後に歯を磨く習慣があっても、歯の重なった部分まで完全に清掃するのが難しいのが現実です。
顎や噛み合わせへの負担
ガチャ歯の状態では、咀嚼するときに顎や特定の歯に偏った力がかかることがあります。結果として、片方の顎関節に負担がかかり、顎関節症を引き起こしたり、肩こりや頭痛の原因になることもあります。また、きちんと食べ物を噛めず、消化に負担がかかる可能性もあります。
歯へのダメージや寿命の短縮
咀嚼の力が特定の歯に集中すると、その歯に過度な負担がかかり、欠けたり割れたり、または歯を支える組織に負荷がかかって炎症を起こしたりする場合があります。将来的な歯の寿命を縮めてしまう可能性もあります。
心理的及び社会的な影響
ガチャ歯は見た目に関わるため、口元に自信が持てず、人前で笑うことをためらってしまう人も少なくありません。歯並びが気になり、見た目がコンプレックスという心理的ストレスがある場合、口を隠しながら笑ったり、緊張感のある笑顔になってしまいます。そのため、ライフスタイルや対人関係に影響することもあります。
ガチャ歯は矯正で改善できる？
幸い、ガチャ歯は矯正治療によって改善可能なケースが多いです。代表的な治療方法やその特徴を紹介していきます。
子どもの矯正
永久歯が生え始める7〜9歳ごろから小児矯正を始めるケースがあります。この時期は歯も生え変わる途中の混合歯列期です。また、顎の骨が成長段階にあるため、矯正で顎の幅を広げたりスペースを作ることで、永久歯が生えても問題ないきれいな歯列を確保しやすくなります。固定式の装置を使う方法もありますが、夜寝る時のみに使用する取り外し可能な装置を使うことで、子どもへの負担や虫歯リスクを抑えやすいことがあります。
大人の矯正
大人の場合はすでに永久歯が生えそろっているため、歯のスペースを抜歯などで確保して行うことがあります。
| 項目 | マルチブラケット矯正 | マウスピース型矯正 |
|---|---|---|
| 装置の特徴 | 歯の表面か裏側にブラケットとワイヤー | 透明のマウスピースを使用 |
| 取り外し | 固定式で不可 | 自分で脱着可能 |
| 見た目 | 表側は目立つが裏側は見えにくい | ほとんど目立たない |
| 対応できる症例 | 中等度〜重度のガチャ歯にも対応 | 軽度のガチャ歯向け |
| 費用 | 裏側は高額になりやすい | 条件により比較的高額の場合あり |
| 治療期間 | 症例により長期になることも | 条件次第で1年未満も可能 |
| メリット | 重度の歯列不正にも対応、歯を精密に動かしやすい | 目立たない、食事制限なし、清掃しやすい |
| デメリット | 表側は目立つ、食事や清掃時にやや不便 | 装着時間を守らないと治療が進まない、大きく動かす治療は苦手 |
矯正の適切な方法は、年齢、症状の重さ、顎の大きさ、ライフスタイルなどによって変わります。自身に合った治療法を選ぶためにも、矯正の知識を専門的に学んでいて、症例経験の多い矯正歯科で相談することが大切です。
予防？ 子どものうちからできる対策
ガチャ歯は遺伝や骨格の問題だけでなく、後天的な要因も関係しているため、後天的な要因への予防法であれば、子どものうちからできる対策もあります。
乳歯のケアをしっかりする
乳歯が虫歯になってしまい早く失われると、その後に生えてくる永久歯のスペースが不十分になりがちです。乳歯は永久歯を誘導する役割もあるため、虫歯予防を心がけ、乳歯を大切にして将来の歯並びリスクを減らしましょう。
硬いものをよく噛む食習慣を身につける
咀嚼をしっかり行うことで、顎の骨の健やかな成長を促し、歯が並ぶスペースを確保しやすくなると考えられます。現代は柔らかい食べ物が多いため、意識的に噛み応えのある硬い食べ物が入った食事を摂るのがおすすめです。
口呼吸ではなく、鼻呼吸を習慣づける
口が開かないと呼吸できない口呼吸では、舌の位置が下がり、上あごの成長が妨げられやすいといわれています。鼻呼吸を習慣にすることで、舌が正しい位置に当たり、顎の成長をサポートし、歯列の乱れを防ぎやすくなります。
骨格や顎などの先天的要因が大きく影響している場合、これらの方法では防ぎきれないケースもあります。その場合はやはり矯正治療を検討する必要があります。
まとめ
ガチャ歯という言葉は俗称ではありますが、医学的に叢生という歯並びの不正咬合の一種であり、決して軽視できない状態です。歯が重なったり、不正に並んだりすることで、見た目のみでなく、虫歯や歯周病、顎や歯への負担、果ては全身の健康や心理面にまで影響が及ぶ可能性があります。
しかし、適切なタイミングで矯正治療を行えば、多くのケースで改善が可能です。早めに専門の矯正歯科に相談することで、噛み合わせ、見た目、将来の歯の寿命を守ることにつながります。
もし自分の歯並びが気になったり、子どもの歯が将来ガチャ歯にならないか不安だと感じているなら、一度歯科でチェックしてみる価値があります。笑顔に自信を持てる、健康な歯並びは、日々の暮らしの質を大きく左右します。
